午後のワイドショー「ゴゴスマ」(TBS系)を、東海ローカルから全国の人気番組へと躍進させた立役者である同番組MCでフリーアナウンサーの石井亮次氏が「話し方の極意」を初めて明かした『ゴゴスマ石井のなぜか得する話し方』が1月12日に発売になる。
上手にしゃべることではなく、相手を楽しませて、場の空気をよくすることを目標にかかげ「他人(ひと)はいじるな、自分をいじれ」「会話は合気道」「究極のほめテク」など、サービス精神にあふれる独特の会話術を披露。話し方で損をしているすべての人の救世主ともいえる本書から抜粋し、具体的な話し方のテクを紹介する。

「嫌われない話し方」のいちばん大事なルールPhoto: Adobe Stock

「相手がどう受け止めるか」を考えて言葉を選ぶ

 新しいコミュニティに入っていくのが不安、初めて会った人と会話するのが苦手という人は多いようです。そう思ってしまう理由の根底にあるのは「何か失言をしてしまって嫌われたくない」という恐れでしょう。だから、どんな言葉をかけていいのかわからない。自分から話しかけるのはリスクが大きい……。

 みんながそんなふうに考えて尻込みしてしまったら、いつまでたっても楽しい空気はつくれません。最初の一歩、最初の一声は勇気がいるかもしれませんが、ほんの少しのコツを覚えておけば「安全」は確保できます。

 そのコツとは、「相手がどう受け止めるかをまず一番に考える」という姿勢です。

「こう言ったら自分がどう思われるかな」ではなく、「こう言ったら、この人はどう思うかな」を最初に考えるということ。

 僕はもうすっかり習慣化していて、何か言葉を発する前に勝手に頭の中でシミュレーションが始まるような感じです。それで「OK」となった言葉なら安心して声をかけられます。

会話ひとつで人の気持ちは動かせる

 そんなふうに考えるようになったのは、学生時代のこんな経験からです。

 当時、大阪府立体育館で開催される大相撲春場所でお客さんを席まで案内するアルバイトをしていた時のこと。黙って案内するのも寂しいので、最初のうちは一つ覚えみたいに、

「相撲は初めてですか?」

 と聞いていたのですが、ある時、ハッと気づきました。

「初めてですか?」という質問は、人によっては「未経験だと思ってバカにされている」と感じるかもしれないな、と。こういう場所、不慣れなんでしょうと言われているように受けとる人もいるかもしれない。

 そこで、質問を、こう変えました。

「楽しいですよね、相撲」(ニッコリ)

 これなら、相手は自分の気持ち次第で自由に答えられる。

「楽しいね」と笑うだけの人もいれば、「いや、初めてなんだけど、やっぱり生で見るのは楽しいですか?」なんて聞き返してくる人もいて、そこから話が弾むようなこともありました。

 さらに、いただくチップの額まで増えて、びっくり。

 会話ひとつで、人の気持ちって動くんだなということを強く意識し始めた頃の忘れられない思い出です。