コーチを経験することなく、日本ハムの監督に就任した新庄剛志。ニックネームは「ビッグボス」、型破りなリーダーの誕生に、多くの日本人がワクワクしたのではないか。先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCA(ブーカ)の時代のリーダーは、新庄剛志のようなタイプがぴったりだ、と筆者が思うに至った理由とは。(コラムニスト 河崎 環)
リーダー論とは、占いと一緒である
ビジネス誌やビジネス書の定番かつ人気テーマといえば「リーダー論」。あらゆる大企業や中小企業のトップ、あるいは政治家やスポーツのチームの監督や成功したアスリートが、自らの組織論やリーダーとしての心がけについてインタビューで答えたり、(多くは口述で)本にしたりしてきた。これが爆発的には売れずともある程度は堅い売り上げを見込めるというので、昭和、平成、令和を問わず、各出版社のビジネス本の定石となっている。ビジネスマンたちは「組織の中で偉い人=成功者の証し」と捉え、リーダー本をありがたく読む。日本のビジネスジャーナリズムは、基本的に組織の「統率」と「勝ち負け」をメシの種とするのである。
最近の私はビジネス誌で新刊書評の連載をしていることもあって、大手を振って老舗大型書店のビジネス書コーナーに長居し、書架を眺め回しているのだが、正直何匹目かのドジョウ本が9割、いや9割5分である。特にリーダー論についての本は「決断」とか「実現」とか「実行」とかのワクワクする言葉をちりばめつつ、雑にまとめると「慎重に考えてリスクを取れ」とか「繊細かつ大胆に」とか、「真面目に不真面目」「仕事を遊べ」みたいに、相反するワードを並列させて「うーん、深い」「新しい」と思わせる作りになっているだけのものもたくさんある。