底抜けに明るいキャラクターと屈強な対人守備で10年間も浦和レッズの主軸を担ってきた、34歳の元日本代表DF槙野智章の契約満了に伴う退団が大きな反響を呼んだ。世代交代を進める浦和側が断腸の思いで来シーズン以降の契約を更新しない決断を下したものだが、そもそもJリーグにおける「戦力外通告」とは、プロ野球界と比べてどのようなシステムになっているのか。過去にも、何人もの大物選手たちが通告されてきたサッカー界特有の「ゼロ円提示」をあらためて振り返った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
元日本代表、浦和レッズの槙野が
涙の退団会見
プロ野球界に続いてサッカー界にも、選手の退団が報じられる時期が訪れた。記憶に新しいところでは、浦和レッズで10年間も主軸を担い、日本代表として3年前のロシアワールドカップも戦った34歳のDF槙野智章の退団が大きく報じられた。
浦和は11月16日に今シーズン限りで槙野が退団すると発表した。一夜明けた17日にオンラインで会見に臨んだ槙野は、青天の霹靂(へきれき)だったと涙交じりに打ち明けた。
「通達されたときには『まさか自分が』という思いが正直ありました。たかが10年かもしれませんが、よそから来た僕にとってこの10年はものすごく濃かった。大好きなクラブにずっといたかったし、このクラブで引退したいと思っていた。毎日泣いています」
所属する選手に翌シーズン以降のチーム構想外を告げる、いわゆる「戦力外」。プロ野球界では第1次と第2次に分かれて通告する。最も遅くなるのは日本シリーズを戦う2チームで、シリーズ終了から5日後が期限として定められている。
サッカー界の戦力外通告は
「ゼロ円提示」
サッカー界はどうなっているのか。厳密に言えば、Jリーグには「戦力外通告」という言葉は存在しない。槙野の場合も浦和から「契約満了に伴い、今シーズン限りでチームを離れることとなりました」と発表されている。
どのようなシステムなのか。まずは単年や複数年に限らず、大半の選手がクラブ側と毎年1月31日をもって満了する契約を結んでいる状況を理解する必要がある。
その上でクラブ側は、新たな契約を結ぶ意思と契約条件が記された「契約更新に関する通知書」を、リーグ戦終了から5日後までに所属選手に通知しなければいけない。今シーズンで言えばJ1は12月9日、J2とJ3は同10日が期限となる。