令和4年度予算案で焦点の一つだった診療報酬改定は、医師や看護師らの人件費や技術料に当たる本体部分を0.43%引き上げる方針で決着した。この結果を日本医師会(日医)関係者は「完敗」だと言い、財務省側も「敗れた」と見ているようだ。日医・厚生労働省(厚労省)・財務省や官邸など、各所の思惑が交錯する中、岸田文雄首相が+0.43%を決断するに至る背景を探った。(ジャーナリスト 横田由美子)
診療報酬改定、日本医師会は「実質的な完敗」
「結局、中川執行部は、何もできなかったということです。岸田首相は、中川俊男日本医師会会長の顔を立てたわけではない。むしろ、中川会長の顔なんてどうでもよかった。重要なのは、半年後の参議院選挙で絶対に勝つことだった。それが、“本体微増”という岸田裁定に結びついたにすぎない。診療報酬全体では-0.94%。実質的には、日医と厚労省は財務省に完敗した。政治の世界を知らなすぎた」
日本医師会関係者は、眉をひそめて、日医の未来を憂えた。
日医に強い影響力を持つ地方の院長も、「この先、日医は、医療の現場はいったいどうなるのだろうか。政権にかみつくだけでは野党と一緒」と、不安を隠せない様子で、深くため息をつき、こう語った。
「会長が中川さんだったから仕方ないとは思う。逆に、よくあの数字で止まってくれた。もっと財務省に下げられていた可能性は十二分にあったからね」
日本医師会と厚労省の「プラス改定」主張には説得力なし
2021年12月24日、令和4年度予算案が閣議決定した。