薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰#10Photo:STOCK4B-RF/gettyimages

調剤7兆円市場の争奪戦が過熱している。勢力を急拡大しているのはドラッグストアなど小売業を母体とする企業たちだ。これまで医療機関の前にある「門前薬局」が圧倒的なシェアを誇っていた構図は変わりつつある。そんな状況に医師会は警戒感を強めるものの、ドラッグストア側も医師を抱き込む「切り札」を用意している。特集『薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰』(全13回)の#10では、激変する調剤ビジネスの勢力図に迫った。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

調剤ビジネスにオーケーも参入
「7兆円」市場を巡る競争激化

 関西地盤のスーパー、関西スーパーマーケットを巡る買収騒動で一躍その名を轟かせた関東地盤のスーパー、オーケー(横浜市)。実はオーケーは、今夏からスーパーでは異例の調剤ビジネスに乗り出している。

 横浜市都筑区にあるオーケー港北店。第1号の調剤薬局はその2階にある。「駅チカ」立地のため、半径数百メートルの範囲内にオーケーのほかに調剤薬局やドラッグストアが7店舗もひしめく。「激戦エリア」にもかかわらず、訪れる患者はオープンからじわじわと増えている。

 オープンから4カ月が経過し、処方箋の受付枚数は足元では1日20枚程度で推移する。現在の態勢だと、1日最大200枚程度まで対応が可能だという。

「食品スーパーとしての強みである集客力が生かせてきている」。オーケーの調剤薬局事業室の越名秀憲室長はそう強調する。実際に平日の午後、近くの診療所で診察を受けた後に調剤薬局を訪れた30代の女性患者は、「いつもオーケーを利用している。待ち時間の合間に買い物ができるので便利だ」と話す。

 驚くべきは“商圏”の広さだ。遠方から足を運ぶ患者も目立つ。これまでに約300もの医療機関の処方箋を受け付けたという。オーケーの誇る強い集客力を反映している。

 オーケーは既存店や新店に併設する形で調剤薬局を広げる計画だ。すでに次の店舗の目星も付けており、来年中には複数の調剤薬局を出す見通し。調剤事業単体での早期の黒字化も見込む。

 スーパーが調剤薬局を自前で運営するのは異例のことだ。しかし越名室長は、「生活圏にあるスーパーは、多くの医療機関からの処方箋を受け付ける『面分業』との親和性も高い。国が推進する『かかりつけ薬局』のような存在にも近づけていける」と力説する。

 こうした異業種からの新規参入に象徴されるように、7兆円といわれる調剤市場を巡る競争はにわかに激しさを増している。中でも有力なプレーヤーがドラッグストアである。ドラッグストアの躍進に、医師会も警戒感をにじませる。