株主総会2025#14Photo:Sipa USA/JIJI

昨年、認証不正を受けて厳しい株主の評価にさらされたトヨタ自動車会長の豊田章男氏。6月12日に開催された株主総会は波乱なく終えたが、次に注目が集まるのは日産自動車だ。業績悪化と不祥事を抱えたまま迎える24日の株主総会で、日産の取締役たちはどんな“審判”を受けるのか。特集『株主総会2025』の本稿では、議決権行使助言会社と機関投資家主要11社の全取締役に対する賛否の行方を予測し、その結果を公開する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

不祥事と業績不振の逆風
日産取締役の賛否はどうなる?

 6月12日、トヨタ自動車の株主総会が開催された。豊田章男会長や佐藤恒治社長ら10人の取締役選任案を含む6議案は、いずれも可決された。

 昨年の株主総会では、トヨタグループ内で相次いだ認証不正問題が焦点となり、ガバナンス体制に疑問符が付けられていた。議決権行使助言会社の米ISSとグラスルイスは、長年にわたり経営の中枢にいた豊田章男氏に責任があるとして、再任に反対を推奨。三井住友DSアセットマネジメントやアセットマネジメントOneなど国内機関投資家も、これに呼応して反対票を投じた。

 結果、昨年の豊田章男氏の賛成率は71.93%へと大きく低下したものの、今年は助言会社2社が賛成推奨に転じたこともあり、トヨタの株主総会は波乱なく終わった。

 だが、株主の視線が向けられているのはトヨタだけではない。次に注目が集まるのが、6月24日に予定されている日産自動車の総会だ。業績悪化と不祥事という二つの課題を抱えたまま、株主の審判を受けることになるからだ。

 まず業績面では、ROE(自己資本利益率)8%未満が続き、直近5年の平均はマイナス圏に沈む。25年3月期決算では、売上高が前年比0.4%減の12兆6332億円、営業利益は87.7%減の698億円に急減。純損失は6709億円と赤字額は大きく膨らんだ。内田誠前社長は業績不振とホンダとの経営統合破談の責任を取って決算前に退任し、後任にはイヴァン・エスピノーサ氏が就任した。

 もう一つの論点が、昨年、豊田章男氏も逆風にさらされた不祥事だ。

 昨年の総会で、日産は下請法違反を巡り複数の機関投資家に不祥事認定されたが、今年2月にも子会社で同様の違反が見つかった。

 こうした状況を踏まえ、ダイヤモンド編集部はレクタスパートナーズが提供する議決権行使予測ツール「AGM(定時株主総会)シミュレーター」を用いて、議決権行使助言会社および主要機関投資家11社の議決権行使基準に基づくシミュレーションを実施。25年の株主総会における全取締役選任議案の賛否を予測した。

 賛否を予測するための対象となる基準は、ROE基準、政策保有基準などの比較的知名度の高いものに限らず、公開されている基準をすべて含む。

 もちろん、実際の投票では個別事情が加味されるため、シミュレーション通りになるとは限らない。だが、株主がどう判断するのか、その傾向を先取りするには十分だ。

 次ページでは、日産の全取締役に対する議決権行使助言会社・機関投資家の賛否予測を公開する。取締役たちは今年、株主からどんな"通信簿"を突きつけられるのか。