株主総会2025#21Photo by Yasuo Katatae

2024年の株主総会で賛成率が64.58%に低迷したのが、三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長だ。今年も貸金庫問題などの不祥事を抱える中、議決権行使助言会社ISSが亀澤氏ら取締役7人に「反対」を推奨し、情勢は一段と緊迫している。特集『株主総会2025』の本稿では、議決権行使助言会社および機関投資家の主要11社による、三菱UFJFGの全取締役に対する賛否を予測した。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

亀澤社長は今年も“危険水域”
ISSが取締役7人に反対推奨

 経営トップの再任は、今や通過儀礼ではない。株主総会は年々、経営陣に対する評価の場としての重みを増している。

 議決権行使助言会社や機関投資家の基準が厳格化される中、社長・会長クラスの議案で株主の十分な信任を得られないケースが相次いでいる。賛成率が80%を割り込む“危険水域”に入る事例が、近年急増しているのだ。

 とりわけ注目度が高いのが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の亀澤宏規社長である。23年の賛成率は75.94%、24年は64.58%と2年続けて80%を下回り、25年も再び選任議案に名を連ねている。

 その矢先、株主の投票行動を左右しかねない動きがあった。議決権行使助言会社の米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)が、亀澤氏を含む7人の取締役に対し「反対」を推奨したのだ。亀澤氏の他にも三毛兼承会長、半沢淳一頭取ら経営中枢の面々が並ぶ。

 ISSが反対を推奨した根拠は、主に二つある。

 一つは、政策保有株の水準だ。三菱UFJFGの政策保有株連結純資産比は、24年3月末時点で28.3%に達し、基準に抵触した。

 もう一つの根拠は、不祥事だ。

 三菱UFJ銀行では貸金庫の窃盗事件が発生し、さらに同行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、銀証連携をめぐり金融庁から業務改善命令を受けた。

 ISSはこれら一連の事案を不祥事認定したとみられ、亀澤氏を含む4人に責任があると判断した。三菱UFJFGは昨年も不祥事認定を多く受けており、2年連続の不祥事ともなれば、機関投資家は反対票を投じやすくなる傾向にある。昨年の賛成率が64.58%と低迷した亀澤氏が、今年はさらに支持を失う可能性もある。

 このような状況を踏まえ、ダイヤモンド編集部はレクタスパートナーズが提供する議決権行使予測ツール「AGM(定時株主総会)シミュレーター」を用いて、議決権行使助言会社および主要機関投資家11社の議決権行使基準に基づくシミュレーションを実施。25年の三菱UFJFGの株主総会における全取締役選任議案の賛否を予測した。

 賛否の基準は、ROE基準、政策保有基準などの比較的知名度の高いものに限らず、不祥事基準も含め、公開されている基準をすべて含む。

 もちろん、実際の投票では個別事情が加味されるため、シミュレーション通りになるとは限らない。だが、株主がどう判断するのか、その傾向を先取りするには十分だ。

 次ページでは、三菱UFJFGの全取締役選任議案に対する機関投資家の賛否予測を公開する。シミュレーションの結果を見ると、賛成率のさらなる悪化も現実的なシナリオになってきた。その詳細や、今年は亀澤氏や三毛氏以外にも反対票が集まりやすい理由を明らかにする。