認知科学をベースに「無理なく人を動かす方法」を語った『チームが自然に生まれ変わる』は、マッキンゼーやネスレ、ほぼ日CFOなどを経て、エール株式会社の取締役として活躍する篠田真貴子さんも絶賛する「新時代のリーダー論」だ。
多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているいま、部下を厳しく管理することなく、それでも圧倒的な成果を上げ続けるには、どんな「発想転換」が求められているのだろうか?
全員のWant toをチーム内で見せ合おう
リーダーは1on1の場などでメンバーのWant to(やりたいこと)を引き出したら、それを記録しておくといい。
とくに今回は「メンバーのWant toやゴールを、チーム内に公開するという手法」についてご紹介しよう。
個人のWant toやゴールは、人事評価や年収とは関係ないので、開示することに大きな問題はないはずだ。
とはいえ、他者に公開するにあたっては、事前にメンバーの同意をとっておくのが望ましいだろう。
理想的なのは、会社の全メンバーの「才能」「Want to」「ゴール」がすべて可視化されている状態だ。
もしそれが難しければ、ひとまず部署内・チーム内から小さくはじめるのでもかまわない。
この情報を1つのファイルにまとめ、全員が閲覧できる「私の取扱説明書」として公開しておくと、チーム内には思いも寄らない化学反応が起きはじめる。
まず「好きなもの」や「価値観」が相互にオープンになっているため、これまでつながりがなかったメンバー間に横のネットワークが形成されやすくなる。
また、お互いがどんな仕事に価値を感じるのかがわかっているため、メンバー同士での頼みごとや相談がしやすくなる。
リーダーがいちいち交通整理をしなくても、しかるべき人にしかるべき仕事が集まるようになるのだ。
さらに、「パーパスの自分ごと化」の面でも、ポジティブな影響が期待できる。
リーダーと2人で話し合っているだけでは、「組織のパーパスと自分のWant toを重ね合わせる」ということの実像がなかなかつかめないメンバーも多いだろう。
しかし、このデータベースを公開すれば、ほかの同僚たちが、自分たちの会社のパーパスをどう解釈し、どのように「自分ごと化」しているのかを具体的に知ることができる。
これによって、いまひとつピンと来ていなかったメンバーのなかでも、「組織のパーパス」についての理解が進み、いっそう「パーパスの自分ごと化」が促進されていくというわけだ。
また、いきなりすべてを公開するのが難しければ、たとえば「ストレングス・ファインダー」の結果だけでもいい。
たとえば、お互いの上位資質5つをデータベース化して公開してみるのはどうだろうか?
これなら客観的な診断の結果にすぎないし、優劣がつくようなものでもないので、メンバーたちの心理的な抵抗もほとんどないはずだ。
こうしてお互いの才能や価値観が共有されると、自分たちの組織がどんな強みを持った人たちから構成されているのかが可視化されることになる。
たとえ突発的なプロジェクトが立ち上がったとしても、各自の強みに沿って職務の割り当てが進み、機能的に対応しやすくなるはずだ。