認知科学をベースに「無理なく人を動かす方法」を語った『チームが自然に生まれ変わる』は、マッキンゼーやネスレ、ほぼ日CFOなどを経て、エール株式会社の取締役として活躍する篠田真貴子さんも絶賛する「新時代のリーダー論だ。
多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているいま、部下を厳しく管理することなく、それでも圧倒的な成果を上げ続けるには、どんな「発想転換」が求められているのだろうか?

つい口にしていませんか? ダメな1on1に共通する「最初のひと言」Photo: Adobe Stock

部下の「現状維持マインド」を刺激していないか?

 前回の記事では、部下が心からやりたいと思っていること(真のWant to)を引き出すうえでは、「飲み会」のような場よりも、いわゆる「1 on 1」形式のミーティングのほうが適していることを指摘した。

 ※参考記事
 「部署飲み会」と「1on1ミーティング」…部下の“ホンネ”を引き出せるのはどっち?

 今回からは、1on1の具体的なやり方を見ていこう。

 まず大切なのは、リーダーのほうからまず面談の意図をはっきりと伝えることだ。

 いきなり1on1の場に呼び出された部下は、「何かよくないことを告げられるのではないか」と不安に思っているはずだ。

 なぜこのような面談をするのかを、端的にわかってもらう必要がある。

「チームのみんなが心からやりたいと思える仕事に向き合っていてほしい」
「みんなが最大限に才能を発揮できる環境をつくっていきたい」

 そういった考えをシェアしたうえで、各メンバーがどんなことを大切にしているのかを教えてもらうためにこの場を設定したのだということを、率直に伝えるのがいいだろう。

 そのうえで大事になるのが、「いきなり仕事の話をしない」ということだ。

 お互いに1対1で向き合った瞬間から「今期の予算達成状況だけど……」とか「昨日のクライアントとの商談で……」といった言葉で口火を切るのは、やめたほうがいい。

 いきなり仕事の話をしてしまうと、ただちにメンバーのなかで「現状」を肯定する内部モデルが立ち上がってしまうからだ。

 いったんこのモードに入ってしまうと、彼らの脳は従来の型に従って情報を処理し、上司の意向と衝突しないような受け答えを出力しようとする。

 いわゆる「空気を読む」という状態だ。

 面談が終わるまでこのスイッチをひっくり返すのは難しい。

 この面談の目的は業績評価ではなく、「パーパス(組織が実現したいWant to)の自分ごと化」にあるということを忘れてはいけない。

 かといって、いきなり「これからどんな仕事をやってみたいと考えている?」と問いかけるのも、同様におすすめできない。

 たとえ、内心では「別の仕事をやってみたい」と感じていたとしても、ほとんどの人はそれを素直に口に出したりしないからだ。

 現状の仕事に不満を持っていると上司に思われれば、自分がなんらかの不利益を被ることになりかねない。

 だからこそ、ほとんどのメンバーは「どんな答えをすれば、上司を喜ばせられるか/不安がらせずに済むか」という観点から、当たり障りのない回答をするだろう。

 これではメンバーのWant toなどとても可視化できない。

 以上のように、1on1では「はじめが肝心」である。

 おすすめなのは、「幼少期に好きだったこと」や「10年以上にわたって続けていること」に関する質問だ。

 幼少期のころから繰り返している行動のなかには、その人のポテンシャルが隠されているケースが非常に多い。

 しかも、無意識的に行っているため、傍から見ると強みに映るのに、肝心の本人がそれに気づいていなかったりする。

 その穴を埋めるのが、リーダーなのだ。