美への投資を行なっていけば、リターンは返ってくる

 そういったエピソードからもわかるように、美への投資は、社員の勤務環境やリクルート活動への投資と実はイコールなのです。細尾は美を介して、人材のリクルーティングや社員教育を行なっているとさえ言えます。

 多くの会社が、社員教育やリクルーティングには大規模な予算をかけると思います。広報や広告もそうでしょう。

 HOSOO FLAGSHIP STOREは、建築やデザインの数々の国際的アワードを受賞しています。日本空間デザイン賞、京都建築賞、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)などです。「ニューヨーク・タイムズ」や「日本経済新聞」など、国内外問わずその他数多くのメディアにも取り上げてもらっています。

 受賞もメディア掲載も、広告を出さずして、本質的にブランドや会社のPRになっているのです。

 視野を広く持ち、美への投資を積極的に行なっていけば、リターンは必ず返ってくるのです。

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。