文政権の対中政策を見ていると、定見のない「さまよい外交」(拙書『さまよえる韓国人』をご参照願いたい」)を続けているが、韓国人の多くはより現実的、客観的に中国を見ており、中国との関係の見直しも進んでいる。それは経済関係であり、文化関係においてもそうである。

 唯一遅れているのが政治・外交関係であるが、今年3月の韓国大統領選挙を前に、新政権樹立後の対中国外交について見直すべきだとする議論が韓国で始まったようである。

中国は北朝鮮を
対米カードに利用

 米中の対立構図がはっきりし、「新冷戦」に対処しなければならない中国にとって、米国との交渉が進まない北朝鮮は「便利に使えるカード」に変わった。

 その一方で、革新政権の韓国は究極的な朝鮮半島の統一と独立のために、中国を利用し米国との距離を置きたがっている。この機会を利用すれば米韓関係、日韓関係にくさびを打ち込むことができるという中国の意図を理解できていない。

 北朝鮮にとっても、中国は対米、対韓カードとして使いやすくなった。

 中国はこれまで必ずしも北朝鮮の軍事力を歓迎してきたわけではないし、北朝鮮も中国を警戒してきたが、米中対立がその構図を大きく変え、中朝の利益が一致しやすい状況になった。

 韓国は北朝鮮を利用した中国の巧みな誘いを受け、ますます中国に追従する姿勢を強めている。しかし、これまでの北朝鮮との交渉の過程で、中国が韓国に協力する姿勢を示してきた事例を筆者は知らない。韓国に協力してきたのは常に日米であった。その現実は米中の「新冷戦」という状況の中でますます歴然としてきた。

 文政権が北朝鮮との関係を前進させるために中国を必要としているという論理は、筆者には全く理解できない。