政府有識者会議委員のZHD川邉社長「デジタル庁がやり切るべき」と発破をかけた規制改革の焦点川邊健太郎Zホールディングス社長(左)と元ゴールドマンサックストレーダーの田内学氏(右)。対談で「新しい資本主義」の行く先を読み解いた Photo by Kazutoshi Sumitomo

岸田政権が掲げる「新しい資本主義」実現の中核を担うのが、政府の有識者会議「新しい資本主義実現会議」だ。委員を務めるZホールディングスの川邊健太郎社長は、どんな改革を訴えるのか。ゴールドマン・サックス証券のトレーダーとして、資本主義の最前線を走ってきた田内学氏との特別対談で、新しい資本主義の行く先を読み解く。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

岸田首相が掲げる「新しい資本主義」
ZHD川邊氏は委員として首相に提言

――岸田政権は成長と分配の好循環を軸とした「新しい資本主義」を掲げています。川邊健太郎社長は、政府の「新しい資本主義実現会議」のメンバーを務めていますよね。

川邊健太郎氏 私は現在、Zホールディングスの社長に加え、21年からはソフトバンクグループの取締役も務めています。この世界は岸田首相が掲げる「新しい資本主義」というよりも、既存の資本主義の最先端で、ものすごく数字で抽象化された世界です。

 そこにきて、岸田首相が設置した「新しい資本主義実現会議」の委員として会議に参加し、双方を体験することで資本主義について日々深く考えています。

田内学氏 岸田首相が掲げる「成長戦略」には、科学技術やクリーンエネルギーの推進などがあって、その一つに「DX化」がありますよね。私は、DX化だけは他の成長戦略と一線を画すものだと思っています。

――なぜでしょうか。

田内 DX化によって、GDPが増加したり、新しい産業を生みだしたりすることができると多くの人は思っています。ですが、DX化はあくまで手段であり、目的ではありません。

 DX化した後の社会が本来の目的であり、ある意味で新しい資本主義の大きな柱なのかなと私は見ています。

(岸田首相が強調する)分配戦略は、新産業を作ってもうかったらみんなに分配しましょうというもので、現状の戦略に新しさはないのかなと感じます。

 新しい資本主義に“新しい”テーマがあるとすれば、ただ金を配るのではなくて、労働時間や労働環境の改善などといった、「ウェルビーイング」を意識した金以外の還元・分配ではないかなと思っています。

 川邊社長は分配についてどのようにあるべきだと考えますか。