菅政権がデジタル庁の立ち上げを看板政策に掲げ、バブルに沸き立つITベンダー業界――。しかし、喜んでばかりはいられない。非効率な政府のIT投資が合理化されれば、ベンダーの淘汰は避けられないからだ。特集『スガノミクスの鉄則』の#6では、天国と地獄を短期間に味わうことになるであろうベンダー各社の“右往左往”に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
横並びの業界構造が壊れる
富士通「チャンスでもピンチでもある」
菅義偉首相は9月16日、首相就任後初めての会見で、看板政策として「デジタル庁」の創設をぶち上げた。
デジタル庁の主眼となっている「行政のデジタル化計画」は、安倍政権でも議題として掲げられてはいた。だが一方で、その実行を危ぶむ声も少なくなかった。霞が関の各省庁の利害関係が一致しないために抵抗があったり、個人情報を政府に握られることを心配する国民感情が根強かったりしたためだ。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で日本の行政の「IT後進国」ぶりがあらわになって風向きが変わった。
国が国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」のオンライン申請でトラブルが続出し、行政のデジタル化の必要性について国民の理解が広がった。
まさに機を見るに敏――。菅首相は風向きの変化を捉え、省庁間の縦割りの打破や働き方改革などを進めるための起爆剤として、政府のデジタルトランスフォーメーション(DX)を行う決断をしたわけだ。
2021年度にも見込まれるデジタル庁の発足によって、政府のIT投資に対する考え方がガラリと変わる。菅政権のニーズや入札方法の変化に適応できないITベンダーは淘汰されかねない。
では、何が変わるというのか。