ITゼネコンの巣窟 デジタル庁#1Photo:JIJI

新型コロナウイルス対策の給付金を国民に配るシステムの不備などにより、日本政府は「デジタル敗戦」を認めざるを得なくなった。その政府が起死回生を狙い、9月1日に立ち上げるのがデジタル庁だ。特集『ITゼネコンの巣窟 デジタル庁』の#1では、同庁職員500人の出身組織の構成を明らかにするとともに、幹部が大手ITベンダーを批判しつつも、実際には引き続き大手ITベンダーに依存している実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

デジ庁500名の陣容が判明!
民間出身はLINE、ソフトバンク、楽天…

「今、優秀な技術者はベンチャーにいます。有能な人でも10年大手ITベンダーで働くと無能になりますから」

 デジタル庁幹部のこのあけすけな言葉が、政府と大手ITベンダーとの「微妙な距離感」を象徴している。

 ここでいう大手ITベンダーとは、富士通、NTTデータ、NEC、日立製作所のことだ。米調査会社ガートナーのデータによれば、少なくとも2014年以降の7年間、政府のIT投資の7割を上位4社で受注してきた。近年、アマゾンやマイクロソフト、アクセンチュアといった外資系企業にも政府のITシステム受注への門戸が開かれたイメージがあるが、上位4社を脅かす存在には至っていない。

 1990年代以降、大手ITベンダーは日本のIT化を支える頭脳集団とされてきた。だがその実、デジタル庁幹部がその能力を否定せざるを得ないところに、IT後進国ニッポンの病巣がある。

 コロナ禍は、日本のIT貧国ぶりを露呈した。給付金すら満足に配れず、コロナ対策アプリもワークしない。日本の「デジタル敗戦」が決定的になったことで、政府によるIT投資は、国民の厳しい視線にさらされている。

 そのため、平井卓也初代デジタル相をはじめとしたデジタル庁関係者は、ここぞとばかりに大手ITベンダーへの批判を強めている。

 例えば、「ベンダーロックイン(特定ITベンダーが独自仕様でシステムを構築、運用することで、契約先を他のベンダーに切り替えることが困難になること。政府が競争入札を実施しても1社しか応札しないことの元凶となっている)はけしからん」「大手ITベンダーは政府から受注したシステム開発を下請けに再委託する“ITゼネコン”にすぎず、その社員に最新のITの知見はない」といった具合だ。

 しかし、である。デジタル庁の要員500人の内訳を取材していくと、結局、大手ITベンダーの人材に依存している実態が明らかになった。

 表向きはデジタル庁と大手ITベンダーの間に隙間風が吹いているのだが、裏では手を握り合っているのだ。その微妙な関係をひも解いていこう。