シリーズ累計159万部を超え、ビジネスパーソンの圧倒的な支持を集める「グロービスMBAシリーズ」。シリーズ最新刊『グロービスMBAミドルマネジメント』は、初めて部下を持つ人が押さえておきたい知識を網羅した1冊だ。今回、『グロービスMBAミドルマネジメント』に興味を持ち、実際に本書を読んだグロービス経営大学院の方3名に、その感想や活用方法を伺った(取材・構成/肱岡彩)。

自身のマネジメントを振り返り、部下育成に役立てるPhoto: Adobe Stock

ミドルマネジャーに薦めたい3つのポイント

――植村さんはSE組織のミドルマネジャーへアドバイスを行ったり、リーダーの育成を支援したりするお立場だと伺いました。『グロービスMBAミドルマネジメント』を読まれていかがでしたか。

自身のマネジメントを振り返り、部下育成に役立てる植村健三(うえむら・けんぞう)
複合機トップメーカー勤務。SE部門を約10年マネジメントした後、現在はSE統括部SE技術推進部で、プロフェッショナルエキスパート職として、SE組織のミドルマネジャーへのマネジメントアドバイザーおよびSEリーダー育成支援に従事。

植村健三(以下、植村):6ヵ所印象に残ったのですが、まず、ミドルマネジャーの部下に読んでほしいと感じた箇所が3つありました。

 1つ目が「リスク管理」の箇所です。リスクへの対応は意思決定を下す上で、必要なスキルだと思います。けれども、リスクをどう捉えるかは、経験で判断しがちです。そうなると、ミドルマネジャーに昇進したばかりの経験の浅い人にとって、ここはすごく苦労してしまいます。この本では、リスクの分類やリスク対応が整理されているので、これを先に読んで理解しておくのは、メリットが大きいと思います。

 2つ目は「エンパワメント(権限委譲)」。エンパワメントができず、自分で仕事を抱えてしまうのは、よくあることです。部下を見ていると、特にそれまでの仕事で業績を上げている人が、陥りがちです。自分ができるからこそやってしまう。SEにとって、プロジェクトマネジメントは非常に重要です。大きな案件になると、1人で仕事ができるわけではないので、属人化することなく、どのように仕事を割り振っていくか。それが課題になっているので、参考になりましたね。

 3つ目が、「ミドルマネジャーが備えるべき資質」です。私自身が普段から感じている部分なのですが、例えばマネジャーに昇進するなど、自分が次の役割に上がっていく時に、その役割に適応していくのでは遅いと思っているんです。「2階層上の仕事の考え方でやっていくと良いよ」と。ここに書かれている4つの資質も、普段から心得ておくと、自分を鍛えられるのではないかと思います。

上司が読むべき、部下育成に役立つ知識

――他の3つは何でしょう。

植村:他はミドルマネジャーの部下に読んでほしいと思うとともに、私自身も役立ったと感じる箇所なのですが、まず「動機づけ」。どうしても人が動かないという経験は誰しもあり、部下のモチベーションを上げるためにどうすれば良いかは、マネジャーの共通課題だと思うんです。自身のマネジメントに置き換えて読みました。

 2つ目は「フィードバック」。重要性はいろいろな書籍で書かれていますが、そもそもどのような考えに基づいてフィードバックを行うのか、その背景にまで触れてあることは少ないです。ワン・オン・ワン・ミーティングといった場の設計はもちろん、重要性が高まっている部下のメンタルヘルスについても書かれており、勉強になりました。

 最後は「コンフリクト・マネジメント」ですね。エンパワメントにも関わりますが、業務の役割を変えたり、変革したりすると、必ずコンフリクト(対立、軋轢)が出てくるんです。より成果を出す組織にするには、このコンフリクトを絶対に乗り超えないといけない。コンフリクトをマイナスに捉えるケースもありますが、私自身はこれが出てくるということは、一人ひとりが自己主張できる自信がついたと捉え、いいことだと考えています。お互い意見をぶつけあえるようにマネジメントする。これが必要です。ここに書かれていることは、コンフリクトをコントロールする際に、参考になります。

――植村さんご自身はミドルマネジャーという立場ではありませんが、それでも、ご自身のマネジメントを振り返ったり、部下を育成したりする観点で、本書を活用してくださっているのですね。

植村:社内でも新人マネジャー向けの研修などは組まれていますが、どちらかというと、管理手法がメインなんです。この本のように理論や考え方という部分が弱い。そこが幅広く扱ってあるので、理論を軸に、「自分はどう行動を起こさないといけないのか」を考えられます。私自身「ミドルマネジャーに昇進した時に読みたかった!」と思いました(笑)

――ちなみにミドルマネジャーになったばかりの植村さんが本書を読んだとしたら、どこが1番刺さったと思われますか。

植村:やっぱりエンパワメントのところでしょうか。ここはなかなか気づかないですよね。立場が上になる時は、自分自身の成果も出ていて、自分に自信を持っているので、人に任せるということがやりにくいというか……自分のやり方を見て育ってくれと思ってしまうんです。そうではなく、「うまく任せた上で経験値を積ませる」というやり方が当時できていたら、もう少し変わっていたかなと思いますね。

――最後に、本書のおすすめの読み方があれば教えてください。

植村:この本はどうせ読むなら僕は早い方が絶対いいと思うんです。1回読んだところで、おそらくすぐに実践では活かせません。ただ、基本的なところが頭に残っていれば、ミドルマネジャーとしてつまずいた際に、もう一度見返すことができます。最初に一通り目を通し、折に触れて見直し、考え方を振り返るそんな読み方が良いのではないでしょうか。