シリーズ累計158万部を超え、ビジネスパーソンの圧倒的な支持を集める「グロービスMBAシリーズ」。シリーズ最新刊『グロービスMBAミドルマネジメント』は、初めて部下を持つ人が押さえておきたい知識を網羅した1冊だ。本連載では、本書の執筆者である嶋田毅氏が、ミドルマネジャーの仕事の重要性やその課題について、書籍の内容を踏まえながら解説する。第4回は、部下に対してネガティブなフィードバックを行う際のポイントを解説する。
MBOで部下から大きな不満
【事例】
山岡信用金庫(仮称)は地方の中堅信金である。同社のある支店で課長を務めるAは半年前にこの支店にやってきた。それ以前は他の支店で課長補佐を務めており、昇進とともに現在の支店にやってきたのだ。
山岡信金では半期ごとにMBOを行うことになっていた。今日はAの部下の中でも、多少成績の振るわないBとのMBOだったのだが、そこでトラブルが生じた。
「課長、この評価は納得できません。なんで総合評価が2なんですか!」
「まあ、実際にあまり良いパフォーマンスが出なかったのは、君も分かっているだろう」
「でも、それは私の担当先が、コロナの影響を大きく受けて経営悪化したせいです。自分にはどうしようもありません」
「そうは言うものの、それはそれでやりようはあっただろうし」
「そう簡単にはいきませんよ」
「新規獲得件数だって、いま一つだったじゃないか」
「それはそうですが……。でも、ライバル信金をメインバンクとしていたA社を開拓した時には、ものすごく褒めてくれたじゃないですか」
「ああ、あれは本当によくやったよ」
「てっきりそうしたこともあって、評価されていたのかと思っていましたよ。なのに突然、低い評価を突き付けられても……」
「A社の開拓は確かに素晴らしかった。ただ、その1つだけをとって、評価が決まるわけではないのは、君も分かるだろう。半期を通して、どのような成果を上げたのか、評価するんだから」
「私の成績が悪いと思っているのなら、褒めるだけではなく、フィードバックが欲しかったです。そうすれば、改善できることもありました。MBOでいきなりこんなことを言われたら、誰だって納得できませんよ」
「(あまりモチベーションが上がらなくても困るから、悪い点を指摘するということはあまりしなかったのだが、やはり良くなかったのかな…)」