シリーズ累計158万部を超え、ビジネスパーソンの圧倒的な支持を集める「グロービスMBAシリーズ」。シリーズ最新刊『グロービスMBAミドルマネジメント』は、初めて部下を持つ人が押さえておきたい知識を網羅した1冊だ。本連載では、本書の執筆者である嶋田毅氏が、ミドルマネジャーの仕事の重要性やその課題について、書籍の内容を踏まえながら解説する。第2回は、上司と部下の両方からプレッシャーを受け、板挟みになる中間管理職ならではの悩みを、いかに乗り越えるか考える。

中間管理職は、上司と部下の板挟みからどう逃れるかPhoto: Adobe Stock

上司と部下の板挟みに悩む中間管理職

【事例】
 C課長は新進のサービス企業であるサンライズコミュニケーションズ社(仮称)の新任の採用担当課長である。急成長の同社にとって、新卒、中途を問わず、新たな人材の獲得は非常に重要な課題であった。C課長の頭を悩ませていたのは、人事を統括するD部長からの厳しい目標設定とその必達であった。

 D部長は事あるごとに、こう言っていた。

「いいか、うちの人事部にはあまり予算がない。つまり、安易にエージェントにお金を支払ったり、WEB広告を出したりする余裕はない。とにかく知恵を絞って優秀な人材を目標通り採るように。今年の目標は中途で20人、新卒で20人だ」

 C課長はかつて次のように提言したことがあったが、結果は芳しいものではなかった。

「部長、予算が潤沢でないのは分かりますが、もう少し何とかならないでしょうか。知恵を絞るにも限界があります。すでに社員の知人などは当たりつくしました。ここは社長に掛け合ってもらって、もう少し採用予算を付けてもらうべきではないでしょうか」

「知恵というのは出し切ったところからさらに5回は絞ってみるものだ。お金に頼るのは好ましい態度ではない。Cさんも採用の責任者になったんだから、もっと部下に知恵を絞らせないと。それが課長の仕事だ」

「…」

 C課長はその旨を部下に伝えたが、案の定反発を買った。

「また部長に丸め込まれたんですか。そんなにいい知恵は出ませんよ。我々も必死で他社のやり方を勉強したりして、何とか頑張っているんです。もう少し部長に掛け合ってください」

「もう我々は疲弊しています。予算さえあればできることが全然できない。この部署で働くのは正直もう嫌です。営業の方が面白そうだし、そっちに異動したい気分です」

「数だけ採ればいいのであれば、採用できなくはありません。ただ、それでは質が全く担保できません。質を維持するにはやはり予算が必要なんです」

 C課長は困り果てていた。

「部長からは無理な要求が来るし、部下からも突き上げられている。自分はどうしたらいいのだろう?」