越境ECを通して
インバウンド顧客を獲得

 さまざまなハードルはあるものの「コロナ禍の今が越境ECの始め時だろう」と、正代氏は話す。

「コロナが落ち着いて海外渡航ができるようになると、ECのユーザーが減るのでは、と懸念する声もあります。しかし日本に実店舗がある場合は、今のうちにECサイトで海外のファンを増やしておくと、インバウンドが復活したときにファンが実店舗に来店する可能性があります。そして帰国後には、ECサイトのユーザーになってもらえるというメリットも。たとえインバウンドが増えても、ECのユーザーがゼロになることはありません」

 ネット上で海外ユーザーとの関係が築ける越境ECは、アフターコロナにも適したビジネスモデルといえる。

 そして地方自治体も越境ECに積極的に取り組めば、インバウンド需要を獲得できる、と正代氏。

「かつて『インバウンドが活況』といわれた頃は、彼らの多くが関西空港から入国して京都から名古屋に渡り、富士山を見て東京に行き、成田空港から帰国するという王道ルートをたどっていました。結局、インバウンドの恩恵を受けていたのは都市部ばかりで、多くの県が訪日外国人に注目されにくい傾向にありました。越境ECサイトを通じて地元の特産品や観光地をアピールし、魅力を海外に発信できれば、その県を目指す訪日外国人も増えるはず。今後は、ECサイトをインバウンドの窓口にする自治体も増えていくでしょうね」

 現状では、国内ECに比べて競合が少ない越境EC市場だが、今後は競合も増え、市場規模が拡大する可能性が高い。未来の越境EC市場を生き残る鍵は「いち早く海外のファンを増やすこと」にあるという。新たなマーケットを求めて大海原へとこぎ出すチャンスは、今なのかもしれない。

●参考URL
・市場規模の拡大予想
https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html
・中小企業・大企業の市場拡大意向
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/3f6c5dc298a628be/20200024.pdf