春節Photo:VCG /GettyImages

先月31日から、中国で春節(旧正月)の大型連休が始まった。毎年、春節の時期になると、多くの人が帰省や旅行で大移動する。しかし、1月に入って各地で新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株の感染が確認されるなど、北京冬季五輪という一大イベントを控える大国は感染抑制に神経をとがらせている。そうした中で、各地方政府は非常に厳しい「移動制限」を設ける。遠く離れた地から帰ったのに、追い返されたケースもあるようだ。(日中福祉プランニング代表 王 青)

毎年数十億人が大移動する「春節」
オミクロン株警戒で厳しいルール設ける地域も

 中国の今年の春節(農歴の旧正月)は、大みそかの1月31日から7日間以上の大型連休となる。中国では、春節の前後40日間は「春運」(春節の特別輸送体制)期間と呼ばれている。帰省や旅行のために移動する人が延べ数十億人に上り、交通機関は1年で一番の繁忙期となる。春運期間中の帰省ラッシュは「民族大移動」といわれ、風物詩になっている。今年の「春運」は、1月17日から2月25日までだ。

 中国の長い歴史の中で、「春節」は最も重要な伝統祝日である。中国の著名な文学者、馮驥才(ふう・きさい)は、「春節は中華民族にとって最大の無形文化遺産だ」と断言している。それくらい、春節は中国人のDNAに深く刻まれている。中国人にとって「春節」は、単なる休暇ではない。故郷であり、家族愛であり、心の帰るときなのだ。

 故郷を離れて遠い地で働く人にとっては、「春節」が1年で最大の楽しみである。田舎にいる家族は、首を長くして息子や娘の帰りを待っている。特に、大みそかの夕飯(中国語で“年夜飯”という)は最も重要な儀式ともいうべきもので、食卓におかずをいっぱい並べて家族皆で楽しむ。一家だんらんで、和気あいあい食卓を囲めば、家の温もりを感じ、移動の疲れも吹っ飛ぶ。

 昨年12月に中国の大手ネットメディア「新浪微博」が行った調査では、約72%の人が今年の春節に帰省の意向があると答えたという。

 しかし、年が明け、1月に入ってから、新型コロナウイルスの変異株である「オミクロン株」の感染が冬季オリンピック開催地の北京をはじめ、河南省や天津市、広東省などで確認された。各地の地方政府は神経をとがらせ、警戒を強めている。