低調に映ったパフォーマンスと、先発するも後半途中で必ずベンチへ下げられるパターンへの是非だけではない。序盤で出遅れた森保ジャパンの戦犯の一人とみなされ、35歳という年齢も相まって限界論までもがネット空間で飛び交っていた。

 さらに1月27日の中国代表戦では、長友に代わって投入された東京五輪代表の中山雄太(ズヴォレ)が完璧なクロスで待望の追加点をアシスト。目に見える結果を残した中山の成長ぶりが、代表チーム内における世代交代論をも過熱させた。

 メディアによる厳しい指摘やバッシングにも近いネット上の批判コメントを、長友自身も目にしていた。その上で今回の活動期間中に「代表への思いがなければ、おそらく(批判から)逃げ出していますね」と苦笑しながら、こんな言葉を残している。

「みなさんからいただいたたくさんの批判が、僕の心に火をつけてくれた。改めて批判は自分にとってのガソリンであり、必要なものだとわかった。代表でいろいろな経験を積んできた中で、自分の中に慢心のようなものがあったのかなと思っている。僕の原点に帰らせてくれた意味で、みなさんには心から感謝しています」

 8試合を終えたアジア最終予選で、長友は全試合で先発している。ただ、論争の渦中にあったサウジアラビア戦だけは「ブーイングされる、と思っていた」と打ち明ける。だからこそ、降り注いできたファン・サポーターの拍手に身体を震わせた。

「サウジ戦は生きるか死ぬかだと思っていたというか、久しぶりにいい意味でのプレッシャーを感じていました。納得できるプレーができなければ自分は代表にいる意味がない、と。自分でもびっくりするぐらい、体の中から魂の叫びが聞こえていました」

 果たして、背水の陣の下で繰り広げられたプレーの数々は、鉄人と呼ばれた20代の長友を思い出させた。例えば、1対1の攻防からは原点ともいえる矜恃、すなわち目の前の相手との“タイマン勝負”には絶対に負けない、という熱さがひしひしと伝わってきた。

 練習でできなければ、もちろん試合でも実践できない。長友は非公開練習でもサウジアラビア戦と同じ熱量をまき散らし、背中と言葉で周囲を引き込んでいたのだろう。逆境を転換させる力をフル稼働させる姿は、森保監督の言葉からも伝わってくる。

「(長友)佑都の受け答えを見ていると、何が起ころうとも常に自分の中でエネルギーに変換して、成長へのパワーに変えていることがわかる。練習でも人一倍元気だし、突き抜けたようなあのポジティブさは本当に素晴らしい。私も見習いたいと思っている」