左サイドの長友が批判されるもう一つの理由
右サイドの伊東が「一人で打開できちゃう」

 長友が批判の対象となる別の理由として、ウイングの南野拓実(リバプール)と縦の関係で形成する左サイドが、右サイドと比べて機能不全に陥っている状況が挙げられる。長友自身も「全ては僕の責任」と潔く認めた上で、こんな言葉も残している。

「右は(伊東)純也が一人で打開できちゃうんですよね」

 長友が苦笑しながら言及した右ウイング伊東純也(ヘンク)が、今や森保ジャパンの攻撃陣で代役の利かない存在になっているといっても決して過言ではない。

 中国とサウジアラビアから計4得点を挙げた今回の最終予選で、2ゴール1アシストをマーク。中国戦でFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)が決めた先制のPKも、右サイドを突破した伊東のクロスが相手のハンドを誘って獲得したものだ。

 得点源であり、チャンスメーカーでもある28歳の最大の武器は50mを5秒8で走破するスピード。よーい、どんでスタートすればまず負けない。トップスピードに到達するまでの加速度を含めて、異次元に映る速さで右サイドを制圧している。

 森保ジャパンの初陣から招集されている伊東だが、当時の右サイドのファーストチョイスは堂安律(PSV)であり、2019年には久保建英(マジョルカ)も台頭してきた。

 スピードという一芸に秀でていた存在だった伊東が、先発に定着し始めたのは2020年秋のヨーロッパ遠征だった。柏レイソルから加入したヘンクで3シーズン目にして、公式戦で12ゴール16アシストをマークしたのも2020~21年シーズンとなる。

 伊東と同じくスピードを武器に、昨夏に移籍したセルティックで大ブレークを果たしたFW古橋亨梧が神戸に所属していたときに、彼の存在意義に関してこんな話を聞いた。わかりやすく説明してくれたのは、ヨーロッパでさまざまな経験を積んだ元日本代表のDF酒井高徳だった。

「ボールを回していく中で、相手の裏を一発で狙うチョイスが絶対に必要になる。ポゼッション一辺倒になると、同じスタイルのチームと戦うときにどうしても苦しくなるので」

 森保ジャパンもボールを保持しながら、状況に応じていい守備からいい攻撃、すなわちカウンターを発動させる。ヨーロッパで生き残っていくためにゴールを奪う大切さを理解し、貪欲になった伊東は森保ジャパンに確固たる居場所を見つけた。

 具体的には、異彩を放つ存在をチームが生かし、異能ぶりが結果を介してチームへ還元される。サウジアラビア戦で伊東が達成した、日本代表史上で2人目となるアジア最終予選での4試合連続ゴールは、組織と個が完璧な形で融合した証しと言っていい。