加藤雅則アクション・デザイン代表
アクション・デザイン代表 加藤雅則氏

10期連続最高益を更新中のワークマン。「高機能・低価格」という4000億円の空白市場を開拓し、国内店舗数はついにユニクロを抜きました。「しない経営」「データ経営」で改革を実行した急成長の仕掛け人が、ワークマン専務取締役の土屋哲雄さんです。今回、組織開発コンサルタントであり、「両利きの経営」を提唱した世界的な経営学者であるオライリー教授(スタンフォード大学経営大学院)の日本における共同研究者でもある加藤雅則さんとの対談が実現。後編では、ワークマンとAGCの組織変革や、両利きの経営の「三つの領域」などについて、当事者の観点で語ってもらいました。(構成/ダイヤモンド編集部 長谷川幸光)

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小手先の改革では
小手先の事業しかできない

アクション・デザイン代表 加藤雅則氏(以下、加藤) 土屋さんがなされていることでおもしろいのが、ワークマンにはすでに組織カルチャーはあるものだから簡単には変えられない、でも、「こういうことをやりたいよね」「そのためにはこういうふうにしていこうよ」というように、戦略を具体的な行動様式に落とし込んでいるところ。

 実はカルチャーそのものに良い悪いはなくて、戦略を実行するにはどのようなカルチャーが必要か、という頭の使い方が重要ですよね。

土屋哲雄ワークマン専務取締役
土屋哲雄(つちや・てつお)
ワークマン専務取締役。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「WORKMAN Plus」が大ヒット。2012年、ワークマン常務取締役。2019年、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当に就任。

ワークマン専務取締役 土屋哲雄氏(以下、土屋) 「経路依存性」という言葉がありますが、我々の場合ですとモノカルチャー的な会社だったので、今まで良かれと思っていたことを否定しないと、次の事業へ向かえないわけです。新規事業というのはファンダメンタルなことだから、小手先の改革では小手先の事業しかできません。

 ファンダメンタルなことをやるのに3カ年計画とかって、期限が短すぎなんです。だから失敗してしまう。次の事業へ進むにはまずはカルチャーから変えなければいけなかったんです。

加藤 土屋さんは「目標に期限を設けてはいけない」とおっしゃっているように、無期限でやるからカルチャーを変えられる。

 私はAGCの島村さん(島村琢哉会長、前・代表取締役社長)が主導した組織変革に立ち会う機会がありました。その取り組みをオライリー先生に紹介したところ、「おもしろいからそれ、一緒に企業の組織研究のケースにしよう」とおっしゃってくださった。

 最近のアメリカのビジネススクールでは、残念なことに日本企業はほとんどケースとして扱われていません。そのため、調査のつもりでオライリー先生とAGCを訪れたら、「AGCは両利きの経営をやっているぞ」という話になったのです。そういう意味では、オライリー先生らの研究のケースとして日本企業に調査訪問をしたのは、AGCが初めてとなりました。