サッカー森保ジャパンに見る「組織変革」、絶不調から5連勝に転じたワケ2月1日のサウジアラビア戦で勝利を喜び合う日本代表 Photo:Koji Watanabe/gettyimages

序盤で大きくつまずいたワールドカップ・アジア最終予選で、日本代表が年をまたいで破竹の5連勝をマークし、今秋に中東カタールで開催される本大会出場へ2試合を残して王手をかけた。精彩を欠いた戦いぶりでファン・サポーターを不安にさせたチームは、何がどのように変わっているのか。中国・サウジアラビア両代表をともに2-0で下した今回のシリーズから、森保ジャパンという組織の現状を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

試合前の練習で「最高の競争と最高の結束力」
サウジアラビア戦快勝の舞台裏

 結果が天国と地獄を分け隔てるサウジアラビア代表との大一番を直前に控えて、日本代表を率いる森保一監督は、指導者人生で初めてと言っていい感覚を抱いていた。

 敵地で負けている首位相手にホームの埼玉スタジアムでも敗れれば、目の前でサウジアラビアにワールドカップ出場を決められる。3位のオーストラリア代表の試合結果次第では、ワールドカップ出場権を自動的に獲得できる2位からも転落する。

 それでも、冒頭の十数分間以外は非公開とされた前々日および前日の練習を、森保監督は「見ていてすごく楽しかった」と振り返り、さらにこう続けた。

「試合にはお金を払って見に来ていただきますが、練習へもお金を払って見に来ていただけるだけの価値がある緊張感と集中力、クオリティーの中でできたと思っています」

 外部からはうかがい知れない密閉空間で、いったい何が繰り広げられていたのか。指揮官が「最高の競争と最高の結束力が同時進行で見られた」と明かした点から真っ先に思い浮かぶのが、論争の的となっていた左サイドバックだ。

一時は日本代表の「戦犯」扱いも…
逆境を跳ね返した長友の渾身のプレー

 南アフリカ、ブラジル、ロシアと3大会連続でワールドカップに出場。ロシア大会後に発足した森保ジャパンでも左サイドバックのファーストチョイスだった長友佑都(FC東京)は、昨年9月に幕を開けたアジア最終予選で批判を浴びる存在に一変した。