岸田文雄首相岸田政権の下で、賃上げ税制の拡充や経済団体を通じて企業への賃上げ要請が行われているが、市場に任せた「一時分配」の効果は限定的で持続可能性に欠ける(昨年12月21日の記者会見に臨む岸田首相) Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

何が「新しい」のか
新自由主義の是正で終わるのか?

 岸田文雄政権での政策運営は、首相の誠実な人格を反映した安定的なものとなっており、内閣支持率も上昇傾向だ。

 だが一方で、「新自由主義からの脱却」をうたった「新しい資本主義」の中身は具体論に欠け、成長戦略についても、これまでの安倍・菅政権の焼き直しという感が強い。

 目玉の一つとされるデジタル田園都市国家構想実現会議を見ても、日本の新自由主義を代表する論者が引き続きメンバーに入っており、どこが「新しい」のかは今のところ不明だ。

 とりわけわかりにくいのは、「成長と分配の好循環」を実現するメカニズムだ。

「新しい資本主義」は、市場の力を万能視する新自由主義の行き過ぎた点を修正する(市場の失敗の是正)という程度の話なのか、それとも成長を促す分配政策により国民の将来不安が軽減され、安心して家庭を持ち子育てのできる社会を目指す本格的な政策なのか。

 後者であれば政府がやるべきことは多い。