岸田文雄首相会見に臨む岸田文雄首相 Photo:Anadolu Agency/gettyimages

岸田新政権、経済政策は
トリクルダウンから底上げへ

 市場原理主義的な「新自由主義」から格差是正(所得分配)を重視する経済政策への転換を掲げる岸田新内閣が発足した。

 これまでのアベノミクスの「三本の矢」(金融緩和、財政出動、構造改革)が前提にしてきたのは「トリクルダウン」だった。

 好景気から富裕層や大企業が最初に利益を得て、彼等が消費・投資を増やすことで雇用拡大や賃金増といった恩恵が中間所得層や低所得層、中小企業などに広く行き渡るというものだった。

 しかし、企業の現預金は約280兆円(2020年3月末時点)まで膨れ上がる一方、2010年代を通じて賃金は伸び悩んできた。

 今回のコロナ禍は格差の拡大に拍車を掛けた。(フリーランスを含む)個人事業主や非正規雇用の収入や雇用機会を大きく損なう一方、世界的な金融緩和の影響もあり、株式市場などは活性化したが、多くの人には無縁の好況だ。

 岸田新首相は「分配なくして次の成長もない」とする。トリクルダウンによらない再分配を志向しているようだ。

 だがそれを実現するには重要な「欠落」がある。