ビッグイベントの取材はしないと決めていたが…
感銘を受けた開会式
日本と中国をキーワードにして、日本でジャーナリストとして活動している私は、最初に原則を作った。それは、「メディアが殺到するような大きなテーマ、イベントなどの取材や報道にはなるべくかかわらない」ということだ。逆に、自分なりの発見ができる、時代の趨勢(すうせい)を読み取れるようなテーマなら、見た目では小さな出来事や話題であっても、積極的に取り組む。
だから、この原則に基づいて、今回の北京冬季五輪については何かを書こうという計画は最初からなかった。しかし、2月4日、北京五輪の開幕式を見終わった私は、すぐにフェイスブックの巻頭写真を「2022中国北京」というものに変え、「北京冬季五輪開幕式の素晴らしさに圧倒されました。張芸謀(チャン・イーモウ)さんはやはりすごい。一部のハイライト動画を入手できたのでここにアップします。開幕式を見落とした方がいらっしゃるなら、すこしでもその雰囲気を体感していただければ、嬉しいと思います」と書いて、動画数本と写真などをアップした。そして、今回のコラムでも、北京五輪について書こうと決めた。
開幕式の会場は、鳥の巣という愛称で知られる北京国家体育場だ。中国最大の陸上競技場およびスタジアムはこの日、ハイテクを基にした光と映像の祭典の舞台と化した。総監督は現代中国を代表する世界的な監督の一人と評される張芸謀。日本では、『紅いコーリャン』(1987年)、『秋菊の物語』 (1992) などの映画で知られる。
張総監督は、カウントダウンの構想にずっと苦しんだ。しかし、ある日、開幕式が行われる2月4日はちょうど二十四節気の最初の節気である立春だと気付いて、今回のオープンニングがひらめいたという。こうして中国色豊かで文化的香りも高い二十四節気のカウントダウンが生まれたのだ。
しかし、大地に春が訪れた光景を表現する光り棒の舞踊が完成するまで、数百のプランが考案され、調整には準備期間である1年間の3分の2も費やしてしまった。まさに「言うはやすく、行うは難し」そのものだ。開幕式で私たちが見たその他のコンテンツも、似たような創作の過程をたどったものだ。