視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
コロナ禍前までは製品販売の
売り上げがゼロだったモデルナ
オミクロン株のまん延によって、新型コロナウイルスと人類の闘いの出口が見えづらくなってきた。今後どんな変異株が登場するか、予測がつかないからだ。ワクチンと特効薬の開発、そして日常生活での感染対策を続けるとともに、一人一人が当事者意識を持って、ウィズコロナへのシフトを考えていかなければならない。
ワクチンに関しては、ファイザーに続きモデルナも、オミクロン株に対応したワクチンの臨床試験を開始したと報じられている。日本における新型コロナウイルスワクチン接種は今のところ、この2社製に限られており、有効性の高いワクチンの開発に期待したいところだ。
さて、もはやほとんどの日本人にその名が知れ渡ったモデルナだが、どのような企業なのか、ご存じだろうか? 海外では有名な、製薬大手と思っている人もいるかもしれない。だが実はモデルナは、2010年に米国で設立されたばかりのバイオベンチャーなのだ。
わずか創業10年余りのベンチャー企業が、170年以上の歴史を誇る巨大製薬会社であるファイザーと、コロナワクチンでは肩を並べているのは驚くべきことだ。しかもモデルナは、2019年度まで市販製品が一つもなく、製品販売による売り上げはゼロだったという。