そのカギとなるのは、大統領選の勝者を決める選挙人の集計や認定方法などについて規定した「選挙人投票集計法(ECA)」の改正ではないかと思われる。

 ECAは19世紀(1887年)に施行された古い法律だが、各州の選挙人の集計や認定に関する規定において曖昧な部分が少なくない。そのため法律の専門家は以前から、敗北した政党が選挙結果を簡単に覆せないようにする必要があると指摘していた。

 トランプ氏はこの法の抜け穴をついて、僅差で敗れた接戦州の州務長官などに働きかけて結果を覆そうとした。また、大統領選の勝者を公式に認定する両院合同本会議の議長を務める副大統領に接戦州の選挙人の認定を拒否する権限があるとうそをついて、ペンス副大統領(当時)にそうするように圧力をかけたのだ。

 トランプ氏の次なる「クーデター計画」を阻止するには、ECAを改正してこれらのことをできないようにする必要がある。

 現在、民主党のエイミー・クロブシャー上院議員やディック・ダービン上院議員などが中心となり、ECA改正の草案作りを進めているが、その中に副大統領は各州の選挙人の認定を拒否する権限は持っていないことや、敗北した候補や政党が各州の選挙人の認定を覆せないようにするための規定などを盛り込む予定だという。

 しかし、2022年11月の中間選挙を控えて、国民の投票権や選挙不正の防止対策などをめぐって両党が激しく対立するなかで、共和党議員の協力を得てECA改正法案を可決できるかどうかは不透明である。

(ジャーナリスト 矢部 武)