北京五輪の裏に見える不都合な格差、「貧困層メダリスト」「鎖の女」事件とはPhoto:xPACIFICA/gettyimages

盛り上がった北京五輪閉会式、羽生選手も大人気

 2月20日、北京冬季五輪は閉幕し、円満な成功を収めたといえよう。いくつかのエピソードがその成功を裏付けている。

 閉会式に入場する各国の選手の人数はもともと600人と想定されていたが、実際は2000人以上の選手が参加した。入場したあと、興奮した選手たちは場内で踊ったりしてその喜びを表現した。司会が「観覧席に移動してください」と3回もアナウンスして催促したが、選手たちの興奮はなかなか収まらなかった。中国の報道によると、これまでの冬季五輪の閉会式での参加者人数として最多記録を更新したという。「これは中国への最大のご褒美」と中国のSNSで喜ぶ声も出ている。

 選手村を出るとき、ある米国の女性選手は、SNSに宿泊した客室から持ち帰ろうとしたもの(うち、3つの抱き枕も含む)を一々見せて自慢する動画をアップし、その無邪気な喜びをフォロワーと共有した。ちなみに、選手村の話によれば、選手たちが使用したものなら、持ち帰ってもOKという。

 日本がらみのエピソードとなると、フィギュアスケートの羽生結弦選手が出場してからは、専ら話題を独占したといっていいようだ。試合の会場の外では、退場する羽生選手を一目見ようと、北京市民は寒さをものともせずに自発的に集まり、道の両側に長蛇の列を作って辛抱強く待っていた。SNSの世界では、羽生選手関連の動画や情報が氾濫している。羽生選手の一挙手一投足まで、議論と称賛の対象になり、その名前を生かして歌まで作った人もいるほどだ。

 その意味では、北京冬季五輪は大成功だと評価していいだろう。開会式と閉会式は中国が自らのソフトパワーをうまく見せた珍しい成功例と言ってもいい。

 しかし、一方、複雑な中国社会に潜んでいる深刻な問題もあぶり出された。まず、金メダリストを例にして説明しよう。