北京五輪で見えた中国の信用欠如ぶり、「違反」「失格」 続出で疑惑の祭典にPhoto:VCG/gettyimages

北京冬季五輪が閉幕した。日本は、金3個、銀6個、銅9個の合計18個の冬季五輪史上最多のメダルを獲得した。一方、誤審、違反、失格、疑惑とさまざまな「騒動」が連日起こる混乱五輪となった。しかし、これまで以上に、北京冬季五輪の「騒動」が拡大したのは、開催国・中国に対する「信用」が欠けていたからだと言わざるを得ない。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

北京五輪、開催前から騒動だらけ

 これまでの五輪でも数々の騒動があった。シドニー五輪柔道100キロ超級決勝で、篠原信一選手が敗れた「世紀の誤審」があるし、バルセロナ五輪陸上100メートル走でのベン・ジョンソン選手のドーピングでの失格なども記憶に残る。「騒動」もスポーツというドラマの一部かもしれない。

 一方、北京冬季五輪では、1つだけではなく、さまざまな「騒動」が起こった。動画が流れ、選手、関係者、専門家、メディアなどから新しい情報が次々と出た。SNSで世界中のネットユーザーから批判が殺到し、騒動が収まらない。従来にない現象が起こっていた。

 北京冬季五輪は、開催前から雰囲気がよくなかった。例えば、国際オリンピック委員会(IOC)の言動を振り返ってみたい。

 東京五輪の前にもIOC関係者の言動が問題となっていた。例えば、トーマス・バッハ会長は、「五輪のために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と発言し、批判されていた。しかし、会長の発言を英語の原文で読むと、ニュアンスが違っていた。

 バッハ会長の発言は、「We have to make some sacrifices to make this possible(オリンピックを開催するためには、我々はいくらかの犠牲を払わなければいけない)」である。この「We」を「誰もが」と訳して怒っている人が多かった。だが、Weは「私たち」なので「五輪関係者がいくらかの犠牲を払う」が正しい意味だろう。

 バッハ会長は続けて、「The safety and security of our everyone is utmost priority. But together with our Japanese colleagues we will have to ensure that our athletes came come together and compete in a safe environment. (皆さんの安全と安心は最優先です。しかし、日本の同僚と一緒に、選手たちが安全な環境で一緒に競技できるようにしなければなりません)」とも述べていた。「日本人は命を犠牲にしろ」「感染リスクを受け入れろ」と言っていたわけではなかったのだ。

 一方、北京冬季五輪前はどうだろうか。