全国2700社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。
果たして「数字がすべてではない」のか?
仕事をする上でよく耳にする言葉があります。それは、
「数字がすべてではない」
という言葉です。たしかに、数字では表せない領域もあります。
デザインとアートの比較が有名ですが、デザインのように「理論で導き出せるもの(数値化できる)」と、アートのように「感覚的に惹きつけられるもの(数値化できない)」があります。
今の時代は、後者のアート寄りの考え方が支持されています。
ただ、順番がおかしいと私は思うのです。
「数字以外のこと」は最後の最後に
たとえば、一見、理論にとらわれていないように見えるアーティストであっても、ちゃんと「基本」を押さえています。
ヘタウマで個性的な絵の漫画家であっても、「ふつうに絵を描いてください」とお願いすると、かなりうまく描けるものです。
「守・破・離」という考え方がありますが、まずは「基本」を押さえて、そこから自分なりの考え方や表現を探します。型があるから、型破りが許されます。
この順番が「逆」になってしまっているのが、今の価値観です。
「数字がすべてではない」という言葉を、「数字は無視していい」と、都合よく解釈してしまっているのです。
新人が必ずぶつかる「壁」
30年以上のベテランが「数字がすべてではない」と語るのと、入社1年目の新人が「数字がすべてではない」と語るのとでは、意味が異なってきます。
前者のベテランは、若い頃は数字を追いかけてバリバリと働き、結果を出し、仕事を極めていった先に、さらに自分のやりたいことが見つかったので、「数字がすべてではない」と悟ったのでしょう。
一方で、入社1年目の新人は、まだ何も結果を出しておらず、業界研究だけに長けている状態です。
そのため、「自分だったらこういう経営をする」「新しい組織づくりをする」ということをお客さん感覚で言っているだけです。
「売上より自分にしかできないことをやりたい」
「ニーズがあるものより自分にしかできないものを作りたい」
そういう思いを持って、学生は社会に出てきます。
しかし、どこかで必ず「壁」にぶつかります。数字が無視できないことに気づかされます。
ならば、「先に数字と向き合ってしまえば、もっと早く成長できるんじゃないか」と考えることはできないでしょうか。
いかなるときも、
いったん「数字」で考える
「いったん数字で考える」というクセをつけることが大事です。
どんな状況であっても、まずは「いったん数字で考える」「正しく数える」「数値化した評価をする」「時間やコストの感覚を持つ」など、基本を押さえることを忘れてはならないのです。
自分の仕事を数値化することは、現実をそのまま見るということです。「ここが足りていないんだな」ということをそのまま受け入れることです。どんなに一生懸命に頑張っていても、生産性が落ちているのであれば、それを受け入れるということ。
「数字がすべてではない」という言葉を絶対に言い訳に使わないことです。
言葉で言うと「素直さ」が必要です。ただ、「素直になれ」という言葉に反発したくなる気持ちもわかります。
そこで、「心を鬼にして数字と向き合う」という考え方として、その瞬間の自分と向き合うために、「数値化の鬼」という思考法を伝授します。
いわゆる売上や利益にうるさい経営者や上司は、「あの人は『数字の鬼』だ」と揶揄されますよね。
それは、数字の責任を他人に押し付けていることが原因です。
そういった「他人に対する数字の鬼」ではなく、「自分に対する数値化の鬼」になることです。
決して「安心」のためではない
社会人によくある勘違いは、数値化が「安心材料」になっていることです。
たとえば、社内で営業成績の数字が資料として共有されたとします。
「なんとなく右肩上がりだからよかった」
「同期入社のあいつより成績が上だからマシだ」
そうやって安心材料を確認するだけで終わっていないでしょうか。
あるいは、その資料作成に追われるだけで、次の利益につながらないのであれば、それは「意味のない数値化」です。
意味のない数字を追ったり、自分に都合のいい数字だけを集めたりするのなら、やらないほうがいいでしょう。
数字は、「不足を見るためのもの」です。
不足を埋め、次の行動を考えるための材料です。
つまり、未来のための「手段」です。
課題を見つけ、道具として使い倒すために、「心をいったん鬼にする」のが大事です。目を逸らさないことです。
数字をありのまま直視する。
数字を見て安心してしまう自分に抗う。
その練習を、本書でやっていきましょう。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヶ月でマザーズ上場を果たす。2022年3月現在で、約2700社以上の導入実績があり、注目を集めている。最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、29万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。