自民党「責任ある積極財政を推進する議員連盟」設立総会の全貌(上)「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の設立総会で発言する安倍晋三元首相(中央) Photo:JIJI

2月9日、積極財政により特化した議論・検討を行うべく、当選期数が4期以下の自民党議員を中心に、新たな議連「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が設立された。この議連は、今後どのような活動を行っていくのであろうか。設立総会の全貌をお届けする。(政策コンサルタント 室伏謙一)

日本の「不都合な真実」に向き合うべく
「責任ある積極財政を推進する議員連盟」を設立

 昨年の自民党総裁選を経て、自民党内ではこれまでの緊縮財政ではなく積極財政への転換を求める動きが勢いを増してきている。特に衆院選後にその動きは加速し、まず高市早苗衆院議員が会長を務める政務調査会に、財政再建推進本部に代わって財政政策検討本部が置かれた。これについては、拙稿『自民党「財政政策検討本部」は、積極財政への大転換エンジンとなるか?』をお読みいただききたい。同本部では、積極財政派のみならず緊縮財政派の研究者や専門家も呼んで、活発な議論が続けられている。

 この動きに呼応しつつも、積極財政により特化した議論・検討を行うべく、当選期数が4期以下の自民党議員を中心に、新たな議連「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が2月9日に設立された。

 同議連の設立趣意書には、次のような記述がある。

「我が国は平成9年をピークに経済成長が止まり、先進国で唯一、所得も上がらず、若者が将来への希望が持てなくなっている」

「若年層の所得の低下は少子化の最大の要因と言われており、この現状を打破し、経済が成長し、所得が上がる社会への転換を早急に実現しなければならない」

 これはわが国の現状の一端を見事に、的確に捉えた文章である。まさにわが国は、他国と比べて経済成長が止まったに等しい状況であるし、実質所得はずっと下降傾向にある。単純に考えても、平均的な初任給はこの20年以上ほとんど変わっていない。バブルの繁栄は遠い過去の話で、現代の若者にとって日本が成長し、繁栄しているという認識よりも、中国や新興諸国は発展・成長している一方で、日本は経済がずっと停滞している、かつて日本を代表していたような企業が外資に買収されるなど、衰退していっているという認識のほうが強いのではないか。そんな国、社会に、若者に希望を持てというほうが難しいのではないか。

 加えて、わが国は人口減少社会といわれ、それが所与のもの、避けられないものとして認識されることが多いようであるが、その最大の原因の一つは、この趣意書記載の通り、若年層の貧困化により、子供を産み育てることができない、それ以前に結婚することも困難になっていることがある。

 これまで、政府は少子化の原因を女性の社会進出や保育サービスの不足と考え、その解消を、女性が仕事と育児を両立できるようにする措置に求めてきた。これは事実上、若年層の貧困化の深刻化という「不都合な真実」から目を背けてきたに等しい。この趣意書のこの記述は、その「不都合な真実」に同議連が真正面から向き合おうとしているということに他ならないだろう。そしてそのためには経済成長が必要であり、積極的かつ機動的な財政出動によって、国が役割を果たすことが必要なのである。そのために必要な検討を行い、積極的に岸田政権に対して提言を行っていく、積極財政への転換を実現していくのが、同議連の役割ということである。