自民党「財政政策検討本部」は、積極財政への大転換エンジンとなるか?財政政策検討本部役員会であいさつする安倍晋三元首相(中央)。右端から高市早苗政調会長、西田昌司本部長 Photo:JIJI

臨時国会に先立ち、自民党の政務調査会に「財政政策検討本部」が設置された。外部専門家も招いてその意見を聞きつつ、議論が進められていくことになる。有益な提言を取りまとめ、積極財政への大転換のエンジンとなり得るのだろうか。(政策コンサルタント 室伏謙一)

衆院選は積極財政の
「中身」をめぐる闘い

 自民党総裁選は積極財政対緊縮財政の闘いであり、10月31日に投開票が行われた衆議院議員選挙は積極財政対緊縮財政の闘いを飛び越えて、積極財政という方向を向いた、その中身をめぐる闘いであった(もちろん、積極財政とうそぶいた超緊縮勢力との闘いという面もあったが)。一方で、矢野財務事務次官の寄稿文による批判のみならず、「バラマキ合戦」と揶揄する声も大手メディア経由で聞こえた。

 結果についてはご承知の通りだ。緊縮勢力である日本維新の会が41議席と改選前から30議席伸ばしたのみならず、選挙後早々から、いわゆる文書交通費をターゲットにして日割り払いにすることや、使途を明らかにすることなど、緊縮の主張を強めていっている。

 日本維新の議席増(といってもかつての最大議席獲得時の54議席に比べればまだ13議席足りないが)に恐れをなしたというよりも、それを受けて維新の主張に流され始めた各党がこの緊縮の主張に便乗、関係法の改正案まで協議されるに至ったということだろう。しかし、この協議は土壇場で先送りにされた。

 これは反緊縮の立場からではなく、使途を明らかにするか否かが焦点となって、明らかにすることに与党側が難色を示したことによるもののようである。これは残念だが、自分たちが目立つため、貨幣観を間違えた「どこかを削ってどこかに付ける」という発想に基づく動きが、少なくとも国会の場では一時的にせよ、結果論的ではあるが、退けられたというのは悪い話ではない。