ロシアがウクライナの全面侵攻に踏み切った場合、強力な武器の一つはすでにキエフにあると言えるだろう。ロシアが数十年をかけてウクライナの軍や情報機関、治安当局の内部に張り巡らせてきた密告者やスパイのネットワークだ。こうしたネットワークは、ロシアがウクライナからクリミア半島を奪って、東部ドンバス地方に極秘で侵攻するなど両国の紛争が始まった2014年当時に比べると、規模は確実に小さくなっている。当時はウクライナ海軍の歴代司令官二人が続けてロシアに寝返り、艦艇の多くをロシア側に手渡したほか、南部・東部全般で治安部隊の幹部もウクライナを裏切った。それ以降、ウクライナでは対諜報(ちょうほう)捜査を通じて、ロシア政府とつながりのある人物が粛清されたほか、ドンバスで親ロ派武装勢力と戦った戦闘経験者を昇進させるなどして、ロシアスパイの排除が進んだ。ウクライナ当局者が明らかにした。