イタリア料理チェーン店の雄であるサイゼリヤは、「デートや記念日の食事で連れて行かれたらがっかりする」店の代名詞のように言われがちだ。しかし、その味はイタリア人が「本場に近い」と絶賛するほどのものだ。それを「まずい」と感じる客とはどんな客なのか。サイゼリヤの創業者の金言にその答えがあった。(イトモス研究所所長 小倉健一)
コスパ最強イタリアン
サイゼリヤの価値
「はやりのレストラン」と聞けば、その理由は味がいいからに違いない、と誰もが思うだろう。だが、必ずしも味だけが店選びの理由なのではない。
例えば「接待で使う店」と一口に言っても、相手やシチュエーションによって選ぶ店は変わってくる。
単に「待ち合わせまでの時間つぶし」だとしても、喫茶店に求めるものは個々の客によって違う。
これまで通り、おいしいコーヒーを求める人もいれば、据え置きの新聞や雑誌のラインナップが充実しているかどうかを店選びの基準にしている人もいる。パソコンでの作業を合間で済ませるための電源があるかどうかを最優先に考える人もいるし、スマートフォンを見るにもWi-Fiが飛んでいるかどうかが重要な人もいる。
つまり、お店に求めているものが人それぞれ違うのだから、単に価格や味だけが「店の売り」ではないということだ。
そこで今回は、イタリア料理チェーン店の雄であるサイゼリヤについて考えたい。サイゼリヤは、「デートや記念日の食事で連れて行かれたらがっかりする」店の代名詞のように言われがちだ。
サイゼリヤは破格の「コスパ」だ。ミラノ風ドリアが300円、グラスワインが100円。ランチセットならスープとミニサラダまでついて、パスタやハンバーグが500円で食べられる。デートや記念日には、もう少し奮発して雰囲気のある本格派イタリアンに行きたいという気持ちは分かる。
だが、子ども連れでパスタを食べたいとき、あるいはドリンクバーでお茶やジュースを飲みながら長時間、気の置けない友人と話したいときなどには、もってこいの店だ。現に、休日も平日もサイゼリヤは大いに賑わっている。子ども連れはもちろん、中高生のグループや、1人でワイン片手に本を読んでいる客などの様子を見れば、その「気軽さ」が支持されていることが分かる。
つまり、これはTPO(時と場所と場合)のずれが問題なのであって、仮にある用途において「がっかり店」の代名詞になったとしても、それはサイゼリヤの価値を揺るがすものではない。
サイゼリヤ創業者の金言
どういう客が「まずい」と感じるのか
「うまくもない料理を出す店が、何であんなにはやるんだ」
サイゼリヤの創業者である正垣泰彦会長は、そうした発想を「間違っている」と言う。