『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
質問なんですが、古い文体の小説を読むにはどうすればいいでしょうか。
具体的に言うと泉鏡花の『高野聖』を読みたいです。過去に3回図書館で借りては文章の難しさに挫けてしまっています。
台詞の言い回しや単語など見慣れないものが出てくるたびにネットで調べて…を繰り返すうちに心が折れるか返却期限がきてしまいます。地道にそれを繰り返して、文体に少しずつ慣れていくしかないのでしょうか?
「外部足場」に頼りましょう
[読書猿の回答]
①テキストを手元に置く
まず時間切れにならないようにテキストは手元に置きましょう。電子データでも構わないなら青空文庫が利用できます。
『高野聖』:新字新仮名 - 青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/card521.html
『高野聖』:新字旧仮名 - 青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/card43466.html
②現代語訳を使う
次に、分からない箇所に行き当たる度に言い回しや単語を調べることは、本人が思った以上に認知資源を消耗します。
トレーニングしてない普通の人が、数回調べただけでヘトヘトになったとしても無理ありません。
この労力をいくらか低減できる「外部足場」のひとつに、現代語訳があります。
『高野聖』なら、理論社から出ている「スラよみ!現代語訳名作シリーズ」が、小学校高学年向けで分かりやすく、また、できる限り原文に即した解釈をしているので、今回の場合、有用だと思います。
③魔法の本を使う
もうひとつ『高野聖』を読む「外部足場」としておすすめなのが、大伴茫人の『泉鏡花 読みほぐし さらさら読む古典3』梧桐書院です。
一見、原文とほとんど変わってないと思えるほど、自然で控えめな「加筆」によって、驚くほど読みやすくなる魔法のような本です。「鏡花なのに読むやすい」という不思議な読書体験ができます。
原文と比較すると、読者がつまづきがちな箇所を拾って、さり気なくサポートしてくれることに気づきます。
④朗読音源を使う
「古い文体の小説を読む」という問いにもう少し一般的に答えるとすると、図書館などで朗読音源がみつかるなら利用すると良いと思います。朗読を聞きながら、自分でも音読する。目で読むだけでは理解が難しいところも、声に出してみると分かることがあります。
様々な「外部足場」も使いながら、わからない箇所にあまりこだわらず、何周か回ってみると、随分違うと思います。