『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

失敗しても前に進める人と、いつまでも後悔し続ける人の差Photo: Adobe Stock

[質問]
 18歳男、春に大学生となったものです。いつもブログを参考にさせていただいています。

 大きく2つ読書猿さんの意見を乞いたいことがあります。以下、冗長で申し訳ありません。

 私は優柔不断です。何かをきめるとき、一旦選んでみても、しばしば「本当にそれでいいのか?」と問う自分が出てきて、決断できません。

 例えば、数学を勉強するときに、その方法やどんなテキストを選ぶかに時間がかかったり、いざ始めても「このやり方でいいのだろうか」と思い悩んで立ち止まってしまいます。数学に限らず何かを決めるときよくこうなります。選択肢がたくさんある時に決められないのです。

 質問です。これは自分の価値観が定まってないから起こるのでしょうか? また優柔不断に対処できる本はあるでしょうか?

 また、私には望みがあります。それは、自分が生きている・関わっている、社会・世界・宇宙・人間について知りたい・考えたい・納得したい、そしてそれを自分の言葉で記したい、というものです。それは必ずしも人に見せるためではなく、動機は「言語・文字を使用し物事を考え・理解することができる人間として(そしてたまたま比較的不自由のない状況に)生まれたからには」上記のことをしてみたいと思うようになったことです。

 それにはやはり人間の知の体系である「学問」と生身の体(感情)を使った世の中での「経験」どちらも重要だと考えます。

 質問です。学問の世界を渡っていくとき、どんな分野から・どのようにみていくのが良いとお考えになりますか?

 さまざまな学問をやたらに色々やることは、結局何もできずに終わるという結末になると思っていますが、なるべく複数の体系を見るのは私の望みに沿ってみると必須だとも思うのです。

 私としては、広く使われる「数学」、学問というもの全体に影響する「哲学」、これまでの人間のあゆみを捉えるための「歴史」が重要かなと思います。これらも細かな分野に分かれると思いますが。。

 最後に…これらを学んで、仕事につながるのでしょうか。。
 普通の仕事について、趣味としてやるのが良いのでしょうか。。
 私の望みは、まだ何も知らない学生ゆえの甘い妄想なのでしょうか。。

 分かりません。人生の先輩としてアドバイスをもらえたら嬉しいです。

まずは「断念する」ことを知ってください

[読書猿の回答]
 選択することは、プラスのものであれマイナスのものであれ、その結果を引き受けることを含みます。成功したときだけ後出しで「やっぱりこっちの方が良かったんだ。そんな気がしたんだ」と言い張ることを「選択した」とは言いません。

 選択とは、他の選択肢についての断念です。これができないと、いつまでも複数の選択肢に気を取られてフラフラするばかりか、本当の意味で失敗することができません。断念することができなければ、自分の選択した結果を引き受けることもできず、失敗から学ぶこともできません。

 人は失敗によって自分の能力の限界を知り、機会も選択肢も有限であることを思い知ります。そうしてようやく茫洋な夢想を、現実的な計画にする一歩を踏み出します。

 価値観とは、有限性の自覚が魂に刻む陰影です(すべてが可能なら価値観の出番はないからです)。

 確かにヒトは小さな限られた存在ですが、この陰影のおかげで、我々は互いの魂が他にないかけがえのないものであることを知ることができます。