バイデン大統領とプーチン大統領2021年6月、米国のバイデン大統領(左)とロシアのプーチン大統領は初めて対面での米ロ首脳会談に臨んだ Photo:Pool/gettyimages

ロシアによるウクライナ侵攻に対する見方はさまざまだが、筆者には米国がロシアをけしかけたように見える。今回のウクライナ紛争の中で「独り勝ち」といえる状況だからだ。その理由についてと、この非常事態に対して投資家はどう向き合うべきかについて考えてみたい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

ウクライナ危機と投資格言
「有事は売り」か「遠くの戦争は買い」か?

 ロシアがウクライナに軍事侵攻して、世界が騒然としている。内外の株価も乱高下していて投資家は気が休まらない。

 この種の展開が読みにくい進行形の問題について記事を書くのは難しい。だが、その時その時の状況と限られた情報で意思決定を継続しなければならないのが「投資」という行為の特徴だ。

 もっとも、時々の情報は株価や為替レートに何がしか反映されており、「自分の方が他の市場参加者よりも確実に先が読める」という場合は起こりにくい。そのため、少なくとも頻繁にアクションを起こせるタイミングは発生しないのが現実だ(ここまで達観すると「趣味としては」面白くないかもしれないが、投資の現実はこのようなものだ)。

 一般に、戦争・紛争の発生は、平和を前提とした経済活動に対する阻害要因や不確実性要因になるため、「リスク回避の売り」を誘発する。今回のウクライナ紛争でも、戦火が拡大した場合にどうなるか、心配な要因は少なくない。エネルギーの市場混乱や価格の高騰が世界経済に悪影響を与えるのではないか、ロシアの銀行を国際決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除するなどの制裁措置が国際金融の綻びを生まないか、などといった点だ。

 投資にあっては「変化」の先頭部分こそが情報のギャップとして特に重要なので、本当は平時にあってこそ、あれこれの可能性を心配するべきだ。しかし、有事が起きてからも心配なものは心配なので、気にしないわけにはいかない。

 他方、相場の世界には「遠くの戦争は買い」という平和主義者が聞くと憤慨しそうな言葉がある。「戦争を材料に株を売るのはうまくいかない」「戦争は経済を活性化することがあり、その場合株はむしろ買いだ」というニュアンスの格言だ。

 今回は、どう考えたらいいのか。