プーチン大統領自身も認めていたレクサスの良さは脅威

「高級志向が高い同国(ロシア)ではレクサスの販売台数は年2万台を超えてドイツや英国を上回る」(日本経済新聞19年5月15日)というデータもさることながら、モスクワなどに行った日本人が驚くのは街中を走る車の「レクサス率」の高さだ。

 実際、次のような記事が10年以上前から繰り返し報じられている。

●モスクワで欧州車よりもレクサスが人気のワケ(WEB CARTOP 18年9月11日)
●ロシアでレクサスが「バカ売れ」するワケ(東洋経済オンライン15年3月13日)

 ロシアの人々が「レクサス」というブランドに寄せる信頼の高さは、昨日今日出来上がったものでない。それは15年ほど前のプーチン大統領自身の言動が証明している。

 2006年のトリノ五輪でメダルをとった選手たちと会ったプーチン大統領は、男子選手には「ランドクルーザー」、女子選手には「レクサス」をプレゼントすることを明かして、うれしそうにこう述べた。

「日本の友人たちが生産を始めるのを待たず、経済界の人たちとプレゼントを決めた」(日本経済新聞06年3月7日)

 実はこの時、プーチン大統領が副市長を務めたサンクトペテルブルグにトヨタが進出することが決まって、かなりご満悦だった。2000年に初めて首相になった直後から、腹心の経済顧問に、「ソニーやトヨタ自動車が進出してくれれば日本のロシアのイメージも好転する。欧米勢に出遅れるべきではない」(日経産業新聞2000年9月5日)なんて言わせて、ラブコールを送っていたのがようやく5年越しで結実したからだ。

 このようなロシア人の「トヨタ」「レクサス」ブランドへの高い評価を振り返っていけば、「アウルス」を国内外に富裕層に売っていこうと考えたプーチン大統領が、どこを「最大の脅威」として敵視するのか容易に想像できよう。

 もちろん、相手は世界中で人気のブランドで、「アウルス」は産声を上げたばかりのチャレンジャー。正面から真っ向勝負を挑んでも勝ち目はない。

 そこで、まずはサイバー攻撃によって、ライバルの機密情報を抜き取ったり、サプライチェーンの脆弱性を調べてネチネチとつくという「サイバー戦争」を仕掛けた。…もちろん、全ては筆者の勝手な想像であって何の根拠もない話だが、「ウクライナの報復」よりよほど理にかなっていないか。