「新しい資本主義」では
経済の停滞は解決しない
岸田文雄首相の提唱する「新しい資本主義」の中身がよく分からないとの批判を、しばしば聞く。
だが、内閣官房に設けられた「資本主義実現会議」の緊急提言や、首相自身が寄稿した論文を読めば、その骨格は明快だ。最大の特徴は、「人」への投資を強調している点だ。
かつての自民党政権が社会資本、つまり公共投資に注力していたことを思えば、大きな転換といっていい。
企業には、非財務情報として人的資本への投資やその蓄積について情報開示を求め、そのために人的資本の価値の評価方法についても、参考指針をまとめていくという。
また分配に焦点を当てているのも、「新しい資本主義」の特徴だ。法人税減税を通じた一般的な賃上げ促進や公定価格の引き上げにより、看護、医療、保育の分野で働く人々の所得を引き上げる方針も打ち出している。
いずれも評価していい政策だが、これだけでは日本経済の停滞状況は変わらない。
不足していることがある。