岸田文雄首相岸田政権は、ステークホルダー資本主義と日本特有の問題である賃金の低迷問題への対応、つまり賃金引き上げや、分配重視の政策とを結びつけて、「新しい資本主義」という政策のパッケージを作り上げようとしているようにみえる Photo:Pool/gettyimages

岸田首相が実現を狙うのは
「ステークホルダー資本主義」?

 岸田文雄政権が経済政策の柱に掲げる「新しい資本主義」の具体的な姿は、依然として明らかになっていない。

 しかし、首相の断片的な発言などを踏まえて考えると、その源流は、近年、世界で注目を集めてきた「ステークホルダー資本主義」にあるように思われる。

「ステークホルダー資本主義」とは、「株主資本主義(株主至上主義)」の対義語だ。

 新自由主義が支配的だった従来の株主資本主義では、短期的な株主の利益の最大化が最も重要と位置づけられており、その結果、従業員や環境、地域社会に負荷をかけるという問題が起きてきた。

 これに対して、企業が従業員や、取引先、顧客、地域社会といったあらゆる利害関係者の利益に配慮すべきという考え方が、ステークホルダー資本主義だ。

 株高や短期的利益をひたすら追求する企業経営の見直しが世界的に広がっているのは確かだが、政府主導の「新しい資本主義」が抱えるリスクに注意が必要だ。