日本人が立ち上げたコーヒー会社が
驚きの米ナスダック上場
米国のナスダック(NASDAQ)市場で2020年6月、極めて珍しい事態が発生した。日本人が米国で設立したベンチャーが、日本の株式市場に上場しないまま、ナスダックに上場するという躍進劇が起きたのだ。会社の名は「NuZee Inc.(ニュージー)」、創業者は東田真輝(50歳)である。
NuZeeが扱う商品はドリップバッグコーヒーだ。言わずもがなだが、紙製のバッグをコーヒーカップの上に引っ掛けてセットし、お湯を注ぐだけで本格的なコーヒーが楽しめる。抽出後は燃えるごみとして捨てられるので、環境負荷も低い。
日本ではおなじみのドリップバッグだが、実は日本で発祥したもので、NuZeeが商品展開するまで米国市場にはあまり普及していなかった。
それまでの米国では、カプセル式のコーヒーメーカーが主流。このマシンにコーヒー豆の入ったプラスチック製カプセルをセットし、ボタンを押してコーヒーを入れるのが一般的だった。
米国でのカプセル式コーヒー市場は年間150億杯分と大きいが、リサイクル可能なごみとして分別されずに捨てられるケースもあり、環境団体からは不要なプラスチックごみとして問題視されてきた。
NuZeeはここに着目し、コーヒー豆の焙煎や販売などを手掛ける企業から原料を受け取り、ドリップバッグに加工して納品するOEM(相手先ブランド生産)ビジネスを開始。年々シェアを伸ばし、ナスダック上場にこぎ着けた。
「ニューヨークや西海岸は環境問題に敏感で、特に若者を中心にカプセル式からドリップバッグに乗り換える人が増えてきました。ドリップバッグは面倒くさいという声もありましたが、手軽でおいしく、環境にいいと評価してくれる人も増えています。コロナ禍になり、家でコーヒーを楽しむ需要が増えたことも追い風になりました」と、東田は手応えを語る。
順風満帆に見える東田のキャリアだが、実はコーヒー業界ではなく金融業界の出身。その半生は波瀾万丈だった。