その結果、10年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて、16年には要介護となるリスクが2.09倍にもなったのです。

 この調査結果では、運転をやめてからは移動に電車やバス、自転車を利用していたという人の要介護リスクも調べていますが、その人たちでも、運転を続けた人に比べて1.69倍の要介護リスクとなっています。

 他の移動手段を使っていたという人でさえ、運転をやめたことの生活へのダメージは大きく、活動量は落ちてしまったのだと思います。運転免許を取り上げられると、活動しようという積極性や意欲の面でも萎えさせてしまうのです。

 たかだか車の運転と思われるかもしれませんが、それをやめたことの影響で要介護リスクが2倍も変わるくらい、高齢者の人たちは脆弱なのです。70代ともなれば、その傾向はさらに強くなります。

 アクティブに生きていたらそのように生活ができますが、いったんそれをやめてしまうとすぐに要介護状態に陥ってしまう。それが70代の危うさだと理解してください。

実は、高齢ドライバーは
危なくない

 運転は続けるべきだと述べましたが、いくらそのように言われても、「でも、高齢になっても運転を続けるのは危ないのではないか」、「事故を起こしてまわりに迷惑をかけるのではないか」などと不安になる高齢者やそのご家族の方もいると思います。

 認知機能の落ちている高齢者が運転操作を誤り、重大事故を多発させていると思っている人もたくさんいると思います。しかしそれは、盛んにメディアでそのような事故が取り上げられたことによる誤解でしかありません。

 そもそも、実際に高齢者が事故を起こす確率は高くないのです。

 警察庁交通局が発表する「平成30年の交通事故状況」によると、原付以上の免許をもっている人口10万人当たりの年齢層別の事故件数では、もっとも事故を起こしているのは16~19歳の年齢層で、約1489件。次いで20~24歳が約876件と続きます。

 一方、高齢者でもっとも事故を起こしている年齢層は85歳以上ですが、それは約645件にしかすぎません。これは、25~29歳の約624件とほぼ同程度です。80~84歳でも約604件。70代に至っては、約500件前後で、その他の30代~60代の年齢層が概ね450件前後なので、特別、事故率が高いとは言い切れません。