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テレビのワイドショーでコメントをするのは、ものすごく難しい。どんな球が飛んできても打ち返し、しかも自分の個性という付加価値を載せないと生き残れない。しかしいまどき、広い場所で何かを発言するのはリスクしかない。うっかりした一言で誰でも炎上してしまう……そんな中、ぐんぐん株を上げて人気者になった、元地方局のある男性アナウンサーがいる。彼が伝授する「誰にでも好かれる」「嫌われない」会話術とは?(コラムニスト 河崎 環)

ワイドショーはなかなかしんどい

 フジテレビの朝の情報番組で、ちょうどコロナ禍ど真ん中の2年にわたってコメンテーターという仕事をした。まさに本日、3月14日の出演が最後となる。

 地上波全国放送、平日朝8時、視聴者層は首都圏・地方問わず老若男女を満遍なくターゲットとする民放ワイドショーという場は、ひと月に一、二度行くだけの身分の私にすら最高の学習機会で、舞台裏はメディアそのもののあり方に関する発見の宝庫だった。

 優秀な制作スタッフに心配はかけたくないので、自分のことだけを話そう。レギュラーコメンテーターという仕事を引き受ける人の多くがそうだと思うが、「コメンテーターという生き物」になる。一日24時間週7日間、生活が全て予習タイムとなり、常に自分なりにあらゆる話題を学習し、カメラの前で話すことをずっと頭の片隅に意識して暮らす。世界は事件に満ちている。いつどういうタイミングでどんな話題が自分に降ってくるか見通せず、しかも呼ばれるからには、あらゆるものごとに対して「自分ならではの」、かつ「広く一般向けの」意見・感想を常に準備していなければならない。