安倍晋三首相の提唱するリフレ政策の先にあるものには、危なさを感じる。金融関係者の間でも、そう感じている人が少なくない。

「リフレ」という目新しいラベルが貼られているが、その内容は金融緩和と財政拡張を推進させるものである。今までは、財政拡張も日銀の国債買取りも、もはや後戻りができなくなることを警戒して慎重に進んできた。その慎重姿勢が転換されると、政府債務は発散経路へと向かう危険が高まる。

 すでに、知らず知らずのうちに大胆な財政拡張・国債買取りが行なわれていることを指摘したい。11月15日から衆議院選挙が本格化して、日銀は独立性を担保している日銀法改正を意識させられた。

 そして12月20日に、政策決定会合で国債買取りをさらに10兆円積み増すことを決めた。この決定は、日銀が法改正をされたくないので、妥協の産物として受け入れた措置である。

 次に財政政策はどうか。安倍首相は、2014年4月の消費税引上げを、半年前の2013年秋の景気情勢を見て判断するという。このメッセージは、先の日銀法と同じように、政府が大型補正予算を決める有力な材料になっている。

 詳しく言えば、政府は2013年4-6月の実質GDP成長率を高められなければ、消費税増税を政治主導で断念することがあり得ると警戒する。現時点では、44兆円を超える財政赤字の拡大を厭わずに、補正予算を膨らませることが検討されている。これも、消費税増税が材料にされなければ実施されなかった決断だと言える。

 安倍首相は、したたかに金融・財政拡張を動かすカードを使いながら、強固な金融・財政の規律のガードをこじ開けようという挑戦を行っている。