「世の中をあっと言わせる企画を作りたい」「自分の夢を仕事で実現させたい」「ユーザーの気持ちがわからない」「企画書が通らない」「プロジェクトを成功させる方法が知りたい」など商品開発や新規事業を生み出す上でのあらゆる悩みを解決!
本連載の著者は「千に三つ」や「一生涯一ヒット」と言われる食品(飲料)業界において「氷結」「スプリングバレーブルワリー」「淡麗」「キリンフリー」など数々のヒット商品を生み出してきた和田徹氏。実は入社から12年間、ヒット商品ゼロだったという著者。なぜ、失敗だらけだった人が、ヒット商品を量産できるようになったのか? 売れ続ける商品づくりの全技法を明かしたのが『商品はつくるな 市場をつくれ』(3月15日刊行)という書籍です。刊行を記念し、本書の一部を特別に公開します。
修飾語が重なると意味がゼロに
企画書をつくろうとするとき、その商品や企画の長所を、なるべく多く詰め込もうとしていませんか?
私自身も欲張ってたくさん詰め込み、盛りすぎて一番大事なことが見えなくなってしまいがちです。
その原因のひとつが、形容詞など修飾語の多用です。
理想は、たった1つの言葉で「ああ、あれか」と、お客様にわかってもらえる商品となることです。
その代表例がコカ・コーラ。
「スカッとさわやか」で思い浮かべる商品は「コカ・コーラ」一択でしょう。「スカッとさわやか」はコカ・コーラに所有されています。
もし、そこに「ヘルシーでコクのある味わい」が付け加えられたら、どうでしょうか?
「スカッとするの?」「ヘルシーって、美味しいの?」と、修飾語同士がケンカし、お客様は混乱します。結果的に、商品に手を伸ばす人は逆に減ってしまうかもしれません。
「言葉を加える」以外の方法とは?
言葉を加えたくなったら、別な角度から工夫してみましょう。
たとえば、体言止めを使ってみる。あるいは、「~へ。」や「~に。」など助詞止めで余韻や含みを持たせる。文末を「~です」から「~だ」に変えれば、力強さが生まれます。逆に、丁寧な口調でやさしくするなど。
ちょっと表現を変えるだけでも、雰囲気は大きく変わります。
また、空きスペースを見つけると、猛烈に「ここにもうひとつ言葉を追加したい!」という衝動に駆られます。やってしまうと、修飾語が1つ増えて、効果はゼロ。踏ん張って、こらえます。
そもそも、あれこれたくさん書き込んでしまうのは、決め手に欠けることの裏返しでもあります。核が定まっていないから、つい補足して何とかしようと考えてしまうのです。
最悪なのは、形容詞や比較級(「より」「もっと」「さらに」など)だらけで、名詞や絶対値が見つけられない薄っぺらい企画です。もちろん、わざわざつくろうとは思いませんが、結果的にそうなってしまうことはよくあるので、注意が必要です。
理想は、修飾語を使わずに、言いたいことが「名詞化」されていることです。
たとえば「氷結」(発売当時は「氷結果汁」)の企画書のときには、商品名にもなった名詞「氷結果汁」が企画書の中央にデンと座っていました。
余計な修飾語をそぎ落とし、それ以外に言い換えようのない「究極の言葉」を見つけていきましょう。
ボツになった言葉はどうするべきか
企画書で使う言葉は「なくてはならないもの」だけで構成します。単なるアイディアの寄せ集め企画だと思われたら、すぐにゴミ箱行きです。企画書はシンプル・イズ・ベストなのです。言葉であふれてしまったときは「この言葉がないと、本当にこの企画は成立しないのか?」と、一つひとつの言葉に問いかけてみましょう。
一所懸命に考えた言葉やアイディアを切り捨てるのは、つらいことです。
取捨選択で泣く泣く捨てることになったものは、必ずどこかに残しておき、完全には消去しないでおきましょう。後から使うことになったり、参考にしたくなることが少なくないからです。
私の場合は紙製のフォルダーに保管したり、「パーキングロット」と名付けたデータ上のスペースに保管しています。
(本原稿は、和田徹著『商品はつくるな 市場をつくれ』を編集・抜粋したものです)