毎春恒例のアップルのスペシャルイベント、今年は「ピークパフォーマンス」というテーマで3月8日(日本時間では9日未明)に行われた。英語の綴りは「Peak」(最高)と「Peek」(垣間見る)をかけた「Peek Performance」。発表内容も文字通り、現行アップルシリコンのM1シリーズの最上位にあたるM1 Ultraと、それを搭載するMac Studioを中心としたものだったが、アップルがあえて言及しなかった部分にも重要なメッセージが隠されていた。今回は、新製品の分析とともに、日本の企業にも参考になると思われる演出について掘り下げてみる。(テクニカルライター 大谷和利)
実質的な製品寿命を重視した新iPhone SE
まず、iPhoneのエントリーモデルにあたるiPhone SEは、新たにA15 Bionicチップを搭載し、5G対応を果たした。A15 Bionicは、iPhone 13シリーズにも搭載されており、基本性能や将来的なiOSのアップデートへの対応という点では同等となった。5Gは、より高速通信が可能なミリ波には対応していないものの、ミリ波の対応エリアが依然として限定的であり、iPhone 13シリーズでもミリ波対応はアメリカ向け製品のみということを考えれば、日本のユーザーには問題とはならないだろう。ちなみに、アップルは純正セルラーチップの開発も進めており、筆者としては、ミリ波対応モデルを拡大するとしても、そのチップの完成時が1つのタイミングではないかと考えている。
今回、アップルがiPhone SEの底上げを図った背景には、最新のiPhoneをより広い層に提供する意図に加えて、途上国などで販売される安価なAndroidスマートフォンが4G対応に留まり、OSのアップデートもメーカーが保証していないことが挙げられるだろう。それらのAndroidフォンに比べれば高価だがリセールバリューも高く、ハイエンドiPhone並みの性能と長期にわたるOSのサポートが保証されることで、価値ある投資だとアピールできるからだ。
また、アップルにとってはiPhone 13シリーズとiPhone SEの搭載チップを統一したことで、サプライチェーンの効率化を図ることができ、モデルごとの需要の変化にもより迅速に対応できるというメリットも生まれる。