App StoreiPhoneやiPadでアプリを利用するには、アップルが運営するアプリストアでアプリをダウンロード・インストールすることになる Photo:Apple

iPhoneやiPad用のアプリは、公式にはアップルが運営するアプリストア(App Store)からアプリをダウンロードしてインストールしないと利用できない。有料アプリを提供する企業がアプリ代やアプリ内課金の30%をアップルに支払う規約は「アップル税」とも呼ばれ、決済もアプリストア経由でしか行えなかった。しかし、2022年初頭からこのルールや料率が変更され、さらにサードパーティーがメールなどの手段でユーザーに外部課金の案内をしたり、閲覧系のサブスクリプションアプリを提供する企業は自社サイトでの課金が行えるようになった。なぜ、このようなことが起こったのか、「フォートナイト裁判」の背景を解説する。(テクノロジーライター 大谷和利)

 オンラインゲーム「フォートナイト」の開発元であるエピック・ゲームズがアップルによるアプリ内課金の手数料(販売価格の30%)に異を唱え、その徴収を回避するために導入した独自の決済システムが、アプリストアの規約違反にあたるとして同ストアから削除されたことに端を発する「アップル税」問題。アメリカでは独占禁止法にあたる反トラスト法の訴訟問題に発展していたが、現地時間の9月10日に連邦地方裁判所において判決(本文参照)が下され、日本でも公正取引委員会による審査が開始されたものの、後者はアップル側から対応策(手数料の一部値下げ)が提示されたことで調査が終結した。実は、グーグルもGoogle Play Storeにおいて同じ理由で「フォートナイト」を削除する措置を行っており、これは、巨大プラットフォーマー対課金アプリ開発者の争いともいえる。

 今回は、この問題における争点と、結果的に起こる影響について明らかにしていこう。

アップルから見た手数料の妥当性

 アップルは、自ら土俵を作ってルールを決め、そこに他のプレーヤーを引き込んで勝負することを好む。iPodも、かつてのiTunes Music Storeも、App Storeも、すべてそのようにして市場を創出し、その分野の支配者となってきた。

 自らルールを作り、他プレーヤーを引き込む。これはある意味で当然の流れであり、革新的な製品やサービスは、単に世の中に送り出しただけでは驚嘆や称賛の声は得られても、ビジネスとして存続させていくことは難しい。過去にアップルは、初代Macintoshなどの販売経験などを通じて、そのことを痛いほど味わってきた。90年代の後半になるまで、飛躍するきっかけをつかめずにいたのだ。