前回まで「対若手コミュニケーションの禁じ手」と題して、(1)放置プレー、(2)過干渉を取り上げてきました。ここで「禁じ手」シリーズを一たん中断し、視点を変えます。
若手が早期離職するのはなぜか、その理由と背景を考えてみましょう。巷間言われるように、「ゆとり世代」の甘えなのか、将来給付型システム(by.城繁幸)が崩壊したからなのか。少なくとも若手を十把ひとからげにしてレッテルを貼ることには意味がありませんし、企業の経営構造が激変したとしても若手を育成しなければならないことに変わりはありません。
今回は早期退職の理由として、若手の多くが挙げる「成長実感が持てない」ということの当否を検証したいと思います。
「やるべきこと」をすっ飛ばして
「やりたいこと」を主張しても通じない
前回の終わりに、私は捨てゼリフを書きました。
“やるべきこと”がキチンとできないのに、“やりたいこと”を主張して、それが認められないと「成長実感が持てない」などとホザいて会社を辞めちまう今どきの若手”
やや蓮っ葉な言い方ではありますが、私にも「おめえら、いい加減にしろよ」という気持ちがないわけではありません。
前回書いたように、「やるべきこと」をすっ飛ばして、「やりたいこと」を主張しても共感されません。そんな若手には、ガツンと言って聞かせる必要があるでしょう。ただし、「やるべきこと」について、「なぜそれをやらなければならないか」を説明する必要はあるかもしれません。
「いいからやれ!」は、若手にとって最大級のNGワードのひとつです。
考えてみれば昔の上司は良かったですね。「いいからやれ!」と言えば、私たちは文句も言わず(すこしはぶつくさ言ったかもしれませんが)、従ったのですから。
この20年で、会社の中の雰囲気も、世の中の空気ともども大きく変わりました。当然ながら働く者の意識も大きく変わっています。さまざまなレベルでの変化が上司・部下のコミュニケーションを変えたのだと思いますが、そのあたりの分析は稿をあらためて詳説したいと思います。
「マスギさんと私たちとでは
時間軸が違うんです」
さて、「成長実感が持てない」ということについてです。
昨年秋に出版した、『だから若手が辞めていく』は、会社を辞める理由について当事者の肉声が聞きたい、という思いから企画をスタートさせたものです。20代ビジネスマン50人へのインタビューと、1000名を対象としたアンケート結果から、入社早々に会社に見切りをつける理由として浮き彫りになったのが、次の3つでした。
(1)成長実感が持てない
(2)ロールモデルがいない
(3)入ってみたら想像と違っていた(ミスマッチ)