東京都内のクリニックが4月から、国内で初めて、第三者の提供精子による体外受精、通称IVF-Dを実施する。夫婦間での体外受精は今や一般的な治療法となっているが、第三者の精子を使った体外受精については、国や日本産科婦人科学会が、法整備がされるまで自粛を求めている。こうした中、IVF-Dが実施されることとなった要因や背景、そして今後の課題について、不妊治療を専門とするはらメディカルクリニック院長の宮崎氏に聞いた。(清談社 深見茉由)
第三者の提供精子による
不妊治療を実施する理由
以前より日本で認められてきた第三者の提供精子による治療法は、AID(非配偶者間人工授精)と呼ばれるものだ。これは、妻の妊娠しやすい時期を見計らい、夫以外の第三者による提供精子を子宮内に直接注入する方法。この治療は、夫の精液に精子が見られない無精子症など、男性不妊と認められた場合に行われてきた。
AIDの実施は法律で定められたものではなく、生殖医療の領域における慣習だったそうだ。AIDは日本産科婦人科学会から認定された施設のみで行うことができるが、同学会のガイドラインに沿った治療を提供しなければならないという。同学会より認定を受けた、はらメディカルクリニック院長の宮崎薫氏は、AIDの妊娠率と実状について説明する。
「AIDは治療方法が人工授精で行われるため、妊娠率は約4%と決して高いものではありません。2020年の当院におけるAIDの実績によると、通常患者一人当たりの妊娠率は31歳までが平均6.5%、32~34歳が平均6.1%、35~38歳が平均9.2%、39歳以上が平均4.6%となっており、通常5~6回程度で妊娠率の上昇は頭打ちになります。しかし、これまで日本では、第三者の提供精子と卵子を受精させる体外受精が認められていなかったため、患者はAIDを反復するしかなく、数年間に渡って20回以上行う人も多いのです」